どろどろ



「元気な春雨のみなさん、こんばんはーっ!さて、明日は何の日かわかってるよね?何もくれない非常識な奴は・・・殺しちゃうぞ☆」



いっそ爽やかな程の脅迫から一夜明け。
神威はプレゼントの山に埋もれていた。



「いやあ、聞き訳のいい優しい部下が沢山いて、俺は幸せ者だネ」



「お前さんが脅したからだろ」



「ん?なんか言った、阿伏兎」



「いんや、何も」




全てのプレゼントの包みを破き、にこにこ顔だった神威の表情が、一瞬で豹変する。
無表情に静かに怒りをたたえたそれに、阿伏兎は軽い調子で声をかけた。



「どうした、団長」



「・・・・・・詩音からのプレゼントが、ない」



いつもより数トーン低い声で二言三言呟いたかと思うと、神威はふらりと出ていった。
その後姿を見送ってから、阿伏兎は神威が破き散らした包装紙の片付けにとりかかる。
今回泣きを見るのは一体どちらになるだろうか、と呑気に考えながら。














「詩音、入るよ?」



部屋に入ると、詩音はベッドに寝転んで本を読んでいた(タイトルは「正しい夜兎の殺し方」。・・・・・・)。
そのリラックスしきった態度に、また苛つく。



「何?神威」



「あのさあ詩音、」



「ん?」



「俺への誕生日プレゼントは?」



忘れていた、と顔面蒼白になる様を想像していた、のに。
彼女は信じられない言葉を吐いた。



「ないよ?」



「・・・・・・は?」



「いや、だから、ないよ?買ってもないし買う気もない」



用はそれだけ?と詩音はこてんと首を傾げる。
凶悪なまでに可愛いその仕草も、今は何の意味もない。
怒りを抑え、神威はゆっくりと詩音に近づいていく。



「なんで?」



「何が?」



「なんで俺への誕生日プレゼントはないの、詩音?」



詩音がその活字を追っていた本を投げ捨て(見るも無残な形になった気がするけど気にしない)、詩音に覆い被さる。
彼女の視界が自分でいっぱいになったことに、妙な優越感を覚えた。



「神威がグリンピース残したから」



両者の間に流れる沈黙。
神威の背中を、冷や汗が伝った。



「私が気づかないと思った?」



「・・・・・・思った」



「残念。海賊王から一歩遠のいたね、神威」



神威はグリンピースが苦手だ。
これは春雨の中でも知る人ぞ知る、国家機密レベルの極秘事項である。
そして神威とその相棒である詩音の間で次のような会話が交わされたのが、ほんの2週間前。



「神威、知ってる?グリンピースを食べられない人は海賊王になれないんだよ」



「・・・まさか。詩音、どこでそんな情報仕入れてきたの?」



「あーあ、残念。今のまんまじゃ神威は永遠に海賊王になれないね」



「寝言は寝て言ってヨ。俺は絶対に海賊王になるよ?現にほら、今阿伏兎は俺が海賊王になる為にこうやって働いてくれてる訳だし」



「お前さんが町一個ぶち壊した理由と謝罪の書類書いてるだけだろこのすっとこどっこい」



「というわけで、神威は誕生日まできちんとグリンピースを食べないとプレゼントなしね」



「詩音に俺に命令する権利はないよ、残念だネ」



「へえええ、たった2週間だけでも頑張ってグリンピースが食べられないんだ。神威はグリンピースごときに負ける提督なんだよって皆に伝えてこようっと」



「何言ってるの、俺はグリンピースが食べられないなんて一言も言ってないよ。グリンピースぐらい食べられるに決まってるだろ、詩音は俺が信じられないの?」



「神威に信じられるようなところなんてあったの?初耳ー。じゃあこれからは残さず食べてね」



・・・・・・・・・。



「全く、残念だよ神威くん。私がちょっと任務に出かけた隙にグリンピースを捨てるような人だったんだね君は」



詩音は淡々とした瞳で、ぶれることなく神威を見上げる。
それが何となく腹立たしくて、神威は詩音の鎖骨に唇をおとした。
ぴくり、と僅かに彼女が震える。



「そうだよ、俺は嫌いなものには絶対に触れたくないし、すきなものだけ俺のまわりにおいときたいんだ。悪い?」



「・・・我儘」



「詩音が側にいるなら、まあなんでもいいけどネ」



視線を絡ませ、どちらからともなく深く深くキスをする。
がり、と唇を噛んでやると、痛みからか眉を寄せた。
その傷口にじわりと滲む血を、これみよがしに舐め取る。



「・・・反吐が出そう」



「出せば?」



神威の返答に詩音はにやりと笑い、三つ編みをひっつかんだかと思うと耳たぶをちろちろと舐めた。
二人に恋人などという甘ったるい言葉は似合わない。
いうならば、まるで化け物同士がじゃれあっているような。



「私、神威のことすき・・・かもしれない」



「は、何それ。俺は詩音を愛してるよ?殺し合いの次にネ」



恋情にまみれた化け物


(見様見真似で愛を刻む)



*************

神威誕生日小説でした。
何これ・・・3か月遅れのくせにやばすぎるクオリティ(^q^)ほんとすみません・・・!
神威になんか子供っぽい好き嫌いがあったら萌える 笑
こんなんだけどお祝いする気持ちはありあまるほどあるので・・・!神威3か月遅れのHappybirthday!





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