飛び出してみようか



エクソシスト・詩音の毎日は、壮絶な追い駆けっこからはじまる。
今日も、詩音は待ち構えているであろう追手を警戒しながら、そろりと朝食に行くために扉を開けた。




「詩音ー、一緒に朝ご飯食べるさー!」



「早速追手その1来たァァァァァ!」



「追手その1?」




きょとんとしているラビに、詩音はそろりそろりと距離を取る。
途端、がしりと腕を掴まれた。




「全く、まだ寝惚けてるんさ?詩音はねぼすけさねー」



「はーなーせー!あんたと朝ご飯なんて絶っっっ対食べない!」



「その通りですよラビ、早く詩音から離れてください」




優しいその声に、詩音の背筋が凍る。
恐る恐る振り向くと、その目はー・・・笑って、いない。




(お、追手その2来たあー・・・)




「詩音は、僕が・・・いえ、僕と食べるんですから」



「前半の恐ろしい台詞は気のせいだよね、そうだよね」



「何言ってるんですか、後で詩音もちゃんと美味しく「ぬわああアレン私の半径50m以内に近づかないでー!」



「朝っぱらからなんてこと言うんさアレン!」



「四六時中頭の中そういうことしかないラビに言われたくないですね」



「・・・アレン、年上を敬えって習わなかったんさ?」



「え、ラビって年上だったんですか?すみません、僕てっきり3才児かと」




にこにこと笑顔で火花を散らす二人。
逃げるなら今しかない、と詩音は持ち前の俊足で駆け出した。




「「あ」」



「・・・・・・はっ。アレン、追うんさ!」



「言われなくても追ってますよ!ふふん、先に詩音を手に入れるのは僕ですからね!」



「ぬあ!?そんなの許さねーし!」



「どっちにも渡さーーん!」



走り出したはいいが、男と女ではやはり体力に差があり。
じりじりとその距離が縮まっていく。




(やばい、このままじゃ本当に二人の餌食になる・・・っ)




それだけはなんとしても避けなければならないと、頭をフル回転させていた、その時。
前方に見えた、見慣れたポニーテール。



「神田あーーっ!へるぷ!ヘルプミイイイイイ!」



「は?」



「お願いたすけて!追われてるの!」



「ああ、モヤシと馬鹿兎」



「そう!たすけて!へるぷみー!」



「五月蝿ェ」



「おーねーがーいー!今度詩音特製絶品かき揚げ蕎麦つくってあげるから!」



「・・・チッ、」



こっち来い、と乱暴に腕を引かれ、部屋の中にこれまた乱暴に放りこまれた。
ガチャリ、と扉に鍵をかけ、息を吐く。




「っは、ありがと、たす、かったー・・・」



「毎朝毎朝飽きねェな」



「それはあの二人に言ってよ。あ、朝ご飯食べるの遅くさせてごめん」



「蕎麦なくなってたらテメェの責任な」



「大丈夫だよ、毎日馬鹿みたいに蕎麦ばっかり食べる物好きなんて教団で神田ぐらいだし」



「あ゛?」



「調子乗りましたすいません睨まないで」




不機嫌な表情をそのままに(低血圧なのだろうか)、神田はドサリと詩音の隣に腰を下ろした。
居心地の悪いようなそうでもないような、変な沈黙が降りる。




「そういえばさあ」



「・・・・・・・・・」



「神田と任務以外でこうやって話すことって少ないよね」



「・・・・・・・・・・・・」



「この頃は忙しくてあんまり会うこともなかった、し・・・って神田?聞いてる?ていうか起きてる、って・・・」



隣を窺うと、神田の瞼は閉じられていた。
昨日の夜任務から帰ってきたと聞いたし、先程の過酷な追い駆けっこに巻き込まれて、疲れて眠ってしまったとしても無理はない。
悪いことをしてしまったなあ、と少し反省する。




(それにしても、綺麗な顔・・・)



もっときちんと見てみたくなり、詩音はずりずりと神田の正面に移動した。
なんて素晴らしいシンメトリー。
硬質な白い肌に、耳のあたりを流れ落ちる綺麗な髪、薄い唇、朝日をうけてその黒さと長さを一層際立たせている睫毛。
ほう、と思わず感嘆の溜め息が漏れる。



すると。
突然、閉じていた瞳がぱちりと開いた。
そしてぐるりと世界が回る。



(・・・え?え?)



「・・・お前、危機感の欠片もねーな」




そこでやっと、自分はどうやら押し倒されているらしいという結論に辿り着いた。
上には、いつもと同じ無表情の神田。
その綺麗な瞳にすいこまれる、と思った。




「う、え?ちょっ、ちょっと待って神田、」



「待たねえ」




唇が頬を掠り、びくりと体を強張らせる。
なんだ、私達はこういう関係じゃあなかった筈だ、それなのに、これ、は。




「苛々すんだよ」



「・・・へ、?」



「お前がモヤシとか馬鹿兎に追い駆け回されんの」



「そ、れは私のせいじゃな・・・っ「だから、」



ぐい、と端正な顔が目の前に迫る。
あと数ミリで唇と唇が触れる距離。



「俺のもんに、なれよ」



日常の一歩半先


手に入れたのは、とろけたような熱




*********
ゆか様キリリクで「神田甘甘」でした。
散々遅くなった上にこんなんでほんとすみませ・・・っ!
神田さんは当然狸寝入りです。笑
そしてアレンとラビの扱いの酷さ・・・すみません。笑

ゆか様、こんな至らないサイトと管理人ですが、もしよかったらこれからもよろしくお願いします(*´∀`*)





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