甘党宣言!



ザアァァァァ・・・


(うっわ、最悪・・・)


詩音は心の中でひとつ、ため息を零した。


今日は天気予報を見る暇もなく家を飛び出したため、傘を持って来ていない。もうバイトは上がりなのだが、雨は一向に止む気配を見せない。


(バイト上がったら銀ちゃんのところに行こうと思ってたのになぁ・・・)


今日は大好きな彼氏の顔を見ずに終わってしまうのだろうか。
バイト仲間に軽く挨拶をして外に出ると、雨は思ったより弱い。


(これならなんとか帰れる・・・かも?)


そう思って詩音が雨の中に飛び出そうとした、その時。


「詩音?」
「あ、銀ちゃん」


湿気でいつもの天パに拍車のかかった銀時が、ニヤッと笑った。


「今上がり?」
「うん。銀ちゃんはどうしたの?」
「あー・・・コンビニでジャンプ買った帰り」
「ふーん」


あれ、おかしいな。
万事屋に近いコンビニでいつも買ってるのに。なんでわざわざここまで?
・・・売り切れてたのかな、ジャンプ。


「ちょうどよかった、今から行こうと思ってたの。傘入れて?」
「あいよ」


二人並んで、てくてくと万事屋への道を歩く。


「バイト先でもらったケーキがあるから、後で食べようね」
「マジでか!・・・あ、でも神楽と新八は志村姉のところ行ってんぞ。だから二人で山分けな!」
「もう、欲張り」
「たまにはいいんですぅー。詩音と糖分が無いと銀さんは死んじゃうんですぅー」
「・・・あっそ」
「お、詩音が照れた。かーわーうぃーうぃー」
「照れてないしっっ!」
「はいはい。そうやってむきになるところも可愛いなー」
「っ」


そうやってさらりと「可愛い」って言うなんて、反則だと思う。 詩音はこっそりと隣の銀髪を盗み見た。 銀時は気付かず、ふんふんと調子はずれの鼻歌を歌っている。
・・・人をこんなにドキドキさせておいて、罪作りな奴め。













「「ただいまー」」
「詩音、ケーキ!ケーキ!」
「ちょっと待って」


適当にケーキを切って持って来ると、ソファの上でうずうずしながら待っている銀時。
子供か!


「はい」
「おっ、サンキュー。いただきます!」


銀時は目を輝かせてケーキにかぶりつく。


「うめぇ!」
「でしょ?あたしが作ったもん」


銀時はピタッとケーキをほおばる手を止めた。


「・・・これ、詩音が作ったの?」
「うん。生クリームに砂糖混ぜてたら、『一体何処の甘党だ』って呆れられた」
「・・・なるほどな」
「え?」
「いや、すげー俺好みの甘さだと思って」


ありがとな、と本当に嬉しそうに銀時は笑った。
その笑顔に、心臓が跳ねる。
・・・何これくらいでドキドキしてんだ、あたし。


「詩音、」


自分の心臓の音に気を取られていた詩音は、銀時の笑みにちょっぴり意地悪な色が含まれていることに気付かない。


そして、気がつけばソファーの上に押し倒されていた。


「え、ちょっ、銀時っ」
「デザートはケーキで、メインディッシュは詩音って、良くない?」
「はぁ?」
「いっただっきまーす」
「待っ、銀ちゃ、んぅっっ」


甘すぎる生クリームの味が、口の中に広がる。
唇を離すと、銀時は少し掠れた声で囁いた。


「詩音、好き」



ケーキより何より甘い君
(君のバイトが終わるのを待って

わざわざ遠くのコンビニでジャンプを読んでたことは内緒)


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美月様への捧げものです。
美月様に限りフリー!




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