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別れ際に、ちゃんと定期連絡をするようにと言い残してダイゴさんは帰っていった。
私がトレーナーカードを使って、ポケモンセンターに泊まることを選んだからだ。

「色々ありすぎて疲れましたねぇ」
借りた部屋のベッドに腰を下ろしてふう、と息をつく。
『で、あのピカチュウどうすんだ?』
問題はまだまだ山積みだ。前途多難というか、多事多難だ。
「どうしましょうか…まずは目覚めるのを待つしかないでしょうけど」
暗に本人の希望を聞いてからにすると告げれば、甘いなと一蹴された。
「あ、そうそう昴くん」
『くん付けやめろ。気色悪い』
「…失礼しました。昴、話があるのですが」
『んだよ改まって』
居住まいを正して今までの経緯を話す。異世界のものであることも、全部。
昴は黙って話を聞いてくれた。そして一言。
『で?』
あっけにとられたのは言うまでもない。
「へ?」
『お前が欲しいのは糾弾の言葉か?叱責の言葉か?あのなぁ、お前が未来人だろうが宇宙人だろうが異世界人だろうがなんだろうが嫌ならお前の手持ちにそもそもならねえよ。オレはお前だから、結鈴だから手持ちになったんだ。』
覚えとけ、と吐き捨てるように言った言葉は乱暴ではあったけれど思いやりに満ちた言葉で。
「…昴、ありがとうございます。あなたがパートナーで本当に良かった」
今日はとてもめまぐるしくて、文字通り目が回るような一日だったけど。
こんなにも、人があたたかいと思ったのはいつぶりだろう。
こんなにも、世界が優しいと思えたのはいつぶりだろう。
本当に、本当に
「ありがとう」

 

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