6.この手の届く範囲
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あのあと人前でお説教は不味いと思ったのか、はたまたジョーイさんが今にも白衣の天使から白い悪魔にジョブチェンジしそうな笑みをたたえていたからか、ダイゴさんは会議室のような部屋を借りて話し合いの場を設けてくれた。
「ふう。とりあえずここなら人に聞かれないだろう。事情をちゃんと説明してくれないか?」

「ええっと…」
なんとか頭の中で伝えたいことを順に直して説明していく。
アブソルくんと友人になったことや、傷だらけになって助けを求めたピカチュウさん。
それに私を探していた(多分赤っぽい服だったので)マグマ団の下っ端と遭遇したこと。

「ハァ…。まったく結鈴ちゃんはもう少し自分を大切にすべきだよ。その傷、残るんだろう?」
つつがなく説明を聞き終えたダイゴさんの第一声はそれだった。
ごめんなさい、と素直にあやまれば、ため息をつかれてしまった。
「それにしてもマグマ団がまだ探していたとは…」

『なあ、さっきから気になってたんだけどよ、お前狙われてんの?』
アブソルくんの問いかけにコテンと首をかしげて暫し。
「嗚呼、そういえば言ってませんでしたね。どうやらポケモンと会話できる能力に目をつけられているみたいなんですよ」

『へぇ…ってことは最近のオレの怪我は婉曲的にお前のせいでもあるわけか』
人間ならにひり、と笑っていたような何か裏のある言葉ではあったけれど紛れもない事実に肩を落とす。
「すいません…」
『悪いと思ってんなら償ってもらおうじゃねえか』
どこぞのチンピラか、と思わず突っ込んでしまいたくなるものの自分に非があるのでなんとかこらえる。
「ここで芋を引くのは女が廃りますものね。どうぞ煮るも焼くも好きになさってください」
『…そこの奴にボール貰え』
身構えていたのだが想像より斜め上の回答をもらってあっけにとられる。
「へ?…あ、あの、ダイゴさん…」
困ってダイゴさんに助けを求めようとしたけれど言葉が通じてない事をすっかり失念していた。
「どうしたんだい?」
「ボール…余ってます?」
ぱちくり、と瞬きした後苦笑いしたダイゴさんにはい、とボールを渡された。
「これでいいんd…」
私が言い終わるよりも早く、アブソルくんはボールをカチリと押して入ってしまった。
あわてて開閉ボタンを押す。
「ちょっと、何やってるんですか!?」
『あ゛あ゛ん?文句は言わせねえぞ。いいか、よく聞け。オレがお前のパートナーだ』



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芋を引く:やくざ言葉でびびる、尻込みするの意。

 

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