甘い物お裾分け




「♪」


鼻唄を口ずさみながらルナは廊下を歩いていた。
その手には大事そうに何かを持っており、目指す場所は自分が使っている部屋。


「りーおーんっ」


部屋の扉を開けるなり、満面の笑顔で入ってくるルナ。
いつも以上に上機嫌な彼女にリオンは微笑ましく思いながらも決して表には出さなかった。


「なんだ」
「えへへ、…はいっ」


後ろ手に隠し持っていた物をリオンの目の前に差し出す。
ルナが持っていたのは皿。そして、その皿の上にはクリームがたっぷりと乗った、


「(プリン…)」


表情に出さないようにしても、明らかに雰囲気が変わり、それは彼がとても嬉しそうな事なのだと、ルナは長い付き合い故に理解した。


「リオンにあげる!」
「…どうしたんだ、これは」
「ユーリが作ってくれたの!」


ユーリ…。あぁ、あの髪の長い黒い奴か、とリオンは記憶の中のユーリの姿を思い浮かべた。


「あのね、甘い物が食べたくなってロックスにお願いしようとしたら、いなかったの。でもユーリがそこにいてね、甘い物が欲しいって言ったら作ってくれたの。すっごく美味しかったから、リオンにも食べて欲しくてもう一個作って貰ったんだ」


嬉しそうに話す彼女の事を思わず可愛いと思ってしまった。と、同時にユーリに対して僅かに嫉妬心を抱いた。
自分より背が遥かに高くて体格もしっかりとしていて歳上でそこそこ男前で兄貴肌で何でもそつなくこなせれて、更には菓子まで作れるときた。
非の打ち所が無いとはあぁいう奴の事を言うのか、と思いながら差し出されたプリンをクリームと共にスプーンで一掬いし、口に運ぶ。
口内に広がる甘味と上品で滑らかなクリームの口当たりに素直に美味しいと思った。


「ね、ね?美味しいでしょ?」
「…まぁ、な」


生来素直な性格では無い為、曖昧な返事をしてしまったが、ルナは理解してくれたらしく顔を綻ばせて喜んだ。
胸が高く鳴ったのを感じ、気を紛らわす為にプリンを食しようとスプーンを持ち直す。


「(じー…)」
「………」


食べているプリンを見つめられ、さっき食ったんじゃないのか、や、僕に持って来てくれたんじゃないのか等と思い、呆れて溜め息を吐いてから少し大きめにプリンを掬い、ルナの口元へ持っていく。
その時ルナの瞳がきらきらと輝き、目の前に持ってこられたプリンに食いついた。


「美味し〜!」
「そうか。…良かったな」
「ありがとう、リオン」







「…あのー…、完全に俺等の存在忘れられてね?」
「リオン!それ寄越しなさいよ!次は私がルナにあーんするんだからっ」
「いやだから、ルーティ、突っ込むとこ違う…」
















坊っちゃんにあーんしてもらいたかっただけの話。あと間接キス。



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