貴方の為に5




そう、自分は疲れていた。疲れて…いたのだ。
数ヵ月前から独自に続けてきた調査がいよいよ核心に迫ってきてそれに焦ってやや先走ってしまい己の体調なんて二の次に突っ切っていった。
もう少し、…もう少しで奴の尻尾を掴める。そんなとこまで来ていた。
けど慎重に事を進めなければ逃がしてしまうどころか彼女が危険な目に合ってしまう。寝不足で劣っている体に加えて精神的にもかなりキていて…。

だからなんでもするという彼女の言葉が麻薬のように脳内を痺れさせ、正常な判断を失いつつもギリギリ保ってた理性でなんとかそれ以上の事を抑えて少しだけ眠るつもりだったのに。


「こんなリオン初めて見たよ」


決して誰にも見せたくなかった姿を見せてしまった。
妙な視線を感じて目覚めた先には金髪と黒髪の長髪二人が物珍しそうな顔して己を見つめており、それに声にならない声を上げて飛び起きたのが1分前。
そして眠る前に見た時計の短針が一つ進んでいる事に気付いたのがその直後。
10分で起こせという命令に従わなかったどころか一緒になって眠ってた部下を叩き起こしたのが数十秒前。


「いっ…たい〜…!」


相当痛いらしく、涙を滲ませながら頭を押さえているルナを見たリオンは加減せずに殴ってしまった事を後悔した。


「オイオイ、女殴って泣かせんなよ」


にやつきながら言ってきた黒髪の言葉にぐっ、と言葉が詰まる。
いくら動揺してしまったとはいえ、それを誤魔化す為に殴ったとか八つ当たり以外の何物でもない。
ルナの傍で金髪がおろおろと声を掛けている。


「サチ、大丈夫か?」
「うん……」


答えた声はいつもに比べ遥かに小さく弱々しい物だった。
時間を守らなかっただけで殴ってしまった自分の方に非があるのに、それを責めようとしない彼女に余計罪悪感が募る。






「どうなったかと思って様子見に行ってみりゃ面白い展開になってたじゃねーか」
「なー。まさかあのリオンが幸せそうな顔してルナの膝枕で寝」
「黙れっ!!」


顔を真っ赤にして喚くリオンにそんなリオンを不思議そうに眺めるルナ。
熱でもあるのかと心配になったサチはリオンの傍に寄るべく立ち上がろうとしたが、1時間以上彼の頭を膝の上に乗せてた所為か足が痺れていて思うように動かせなかった。


「あたた…、痺れた…」


ビリビリと爪先まで痺れ渡る感覚に耐えたが、立ち上がる事が出来ないと悟るとそのまま座った状態で三人を眺める。
そこでは黒髪の男ユーリがリオンの耳元で何やら囁いており、金髪の男スタンが傍に寄り聞き耳を立てていた。


「どうだったんだ、アイツの膝枕」
「なっ…!」
「ルナって細いよな〜。やっぱ柔らかくないのか?」
「いや…、それなりに……。…!!何を言わすんだ!」
「「へ〜…」」


落ち着いた赤が再び強まり、感想を溢した事に二人の笑みが一層深くなる。
全く会話が見えないルナからしてみれば異様な光景である。


「リオンー。顔真っ赤だけど大丈夫?熱ない?」
「煩い!」
「えぇ!なんで私が怒られるの!?」


全く持って理不尽である。






「なぁ、俺にもしてくんね?膝枕」
「え、やだ、無理」


ユーリの頼みをあっさりと断るルナ。間髪入れず即座に拒否され、部屋の空気が固まった。


「……なんだこれ。なんか妙に傷付いたんだけど」
「じゃあルナ、俺は?」
「無理」


ユーリ同様スタンも(しかも真顔で)断り、フラれた二人はなんとも複雑な表情を浮かべている。
特に悪気がないルナはきょとんと首を傾げる。


「私何か悪い事言った?」
「気にするな」
「…リオンにはしてた癖に」
「あ、その事?だって、してあげたくても出来ないんだもん。リオンは特別」
「良かったなリオン」
「何がだ」


ここぞとばかりにからかわれている事にリオンは当然気付き、同時に腹が立った。
だがここで荒ぶっては思う壺だというのも承知しており、あくまでもしれっと返す。


「…本当は嬉しくて堪らない癖に」


その言葉にリオンは赤い顔のまま煩いとだけ返すのであった。










「ジューダスー」
「お前か。何の用だ」
「ジューダス、眠くない?」
「は?」
「あのね、私が膝枕してあげたらジューダス、仮面取ってくれるって。私もジューダスにならしてもいいんだけど、その仮面付けたままだったら痛いしね」
「……誰だ」
「へ?」
「誰に入れ知恵された。そんな馬鹿げた戯れ言」
「ロニ(入れ知恵?戯れ言?)」
「…そうか」
「あれ?ロニからジューダスが膝枕して欲しいらしいって聞いたんだけど違うの?」
「……(それはそうだが…、まずはアイツ殺す)」



「お、オイ…ジューダス?どうしたんだよ、何殺気立って…」
「貴様は一度っ、地獄に堕ちろ!」
「ぎゃあああぁぁぁぁぁ…!!」

















むっつりすけべなリオンとジューダス。



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