ねこねこねこ




「アレンのそれ、可愛いね」


ルナが指差したのは、アレンの頭に乗っている猫っぽい耳の形をした頭装備(星のピアス付き)。


「そう?」
「うん、お星様も付いてて可愛い。いいなぁ」


どうもルナはこの装備に興味を持ったらしいが、生憎とこの装備はディセンダーにしか装備出来ない伝説の武具の内の一つなので、貸してやる事が出来ない。
ルナもそこのところはわかっているので、ただいいなとだけ言い、欲しい等とは言わなかった。
ふと、アレンはある事を思い出した。


「そういえば、前にリタがこれと同じようなの付けてたよ」
「リタが!?」
「うん」


大好きなリタがアレンと同じような猫っぽい耳を付けていた。
そう知るや否や、ルナはアレンそっちのけでリタの元へと走り出した。






「リタ!猫!」
「は?何よ、突然」


いつもいてる筈の研究室にリタはおらず、ハロルドに部屋でエステルの相手していると聞き、エステルが普段過ごしている部屋にやってきたルナ。
部屋にいたリタを見るなり興奮気味でリタに詰め寄ったが、リタは訳がわからないと言った様子で首を傾げる。


「リタが猫っぽい耳付けてたって!アレンが言ってた!」
「…アイツ」
「アレンもさっき猫っぽい耳付けてて可愛かったの!だから、リタも付けてたら絶対可愛いの!私、見たい!」
「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ。なんであたしが…」
「いいじゃないですか、リタ。確かに可愛いかったですよ、ねこねこウェイター」
「エステルまで…!」


純真無垢な二人に言い寄られてリタは言葉が詰まる。
何やら視線を感じてそちらを向けばユーリがニタニタと楽しそうに眺めていた。


「(アイツ…後でファイヤーボールぶっ放してやる)」
「はい、リタ」
「ちょっとエステルいつの間に…!」


エステルの手にはリタの所有物である猫耳のカチューシャが。
ルナがそれを見るなり可愛い!と目を輝かせながら期待に満ちた眼差しをリタに向ける。


「っ、わかったわよ!ただし、ちょっとだけだからね!すぐ外すからっ」


ひったくるようにエステルの手からカチューシャを奪い取り、自棄になって自分の頭に嵌めた。
彼女の髪色と同じ茶色の猫耳が見事にマッチしている。


「リタ可愛い!」
「っ!いきなり抱き付かないでよっ!もう外すわよ、こんなの」
「えぇ〜!」
「ルナも付けてみりゃいいじゃねーか」


本当にすぐ外された事に落胆していたら、低い男の声が乙女達の輪の中に割って入ってきた。
ニヤついた顔のままユーリは立ち上がり、リタの手からカチューシャを取ってルナに投げ渡す。
突然手に渡った物にパチパチと瞬きする。


「いいだろ、リタ」
「別に無くて困る物じゃないから構わないけど…」
「付けてみてください、ルナ」
「う、ん」


向きを確かめてからルナは渡された物を頭に嵌めた。
小さな頭に生えているかのような猫耳。同色じゃないのが少し残念だが、それでも充分可愛らしい(ユーリ談)。


「わぁ。ルナも似合ってますよ、可愛い」
「そ、そっかな」
「…悪くは無いわね。貸してあげるわ」
「本当?ありがとう!リタ」
「リオンの奴にも見せてやれよ。きっと喜ぶぜ?」


ユーリの言葉にリタは顔を顰めた。
いきなりリオンの名前が挙がった事に不思議に思ったが、彼が喜ぶなら、と純粋な気持ちでそう思い、ユーリの言葉に素直に頷いてから部屋を出た。


「…アンタみたいに変な趣味に目覚めたらどうするのよ」
「変なとは失礼だな。男の浪漫だろ。あ、どうせならメイド服でも着せたら良かったな」
「バカっぽい…」
「?」











「………」
「どうかな、リオン」


猫耳装着状態で問い掛けるルナ。
リオンはカッと顔を赤くさせた後、鼻血が出そうになるのを感じて抑えながらそっぽ向いた。


「どうしたの?気分でも悪い?」
「(頼むから近づかないでくれ…!)」


リオンの懇願も虚しく、ルナはリオンに近づき、熱でもあるのかとでも思ったのか額に手を当てる。
視界に入れないよう必死に背けようとするが欲望には勝てず、チラチラと見てしまう。


「な…、なんなんだ、それはっ」


振り絞って出した声は上擦っていて不自然な物。ルナは特に気にも留めず、事の経緯を説明する。
アレンの猫耳が可愛かった事やリタが同じような物を持っていて、今付けているのがそのリタの物である事。


「ユーリがリオンに見せたら喜ぶって言ってたからこのまま来たんだよ?」
「(アイツいつか斬る…!)」


ルナに妙な事を言ったらしいユーリに軽く殺意が沸いた。
言われた本人は特に意味をわかってないらしく、にゃんにゃんと猫の鳴き声の真似までしてとても上機嫌な様子。


「大人しくしてろ!(これ以上はやめてくれ…っ)」
「にゃんで?」
「…っ」


タチが悪いのは計算でやっておらず、天然そのものである事。
たかが猫耳、されど猫耳、恐ろしや猫耳。
装着しただけでここまで動揺してしまったリオンは己の中で何かが目覚めそうになるのを抑え込むのに必死であった。

















続きます。



|



back top



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -