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今年も射的のおじさんを負かして、屋台を回って赤也達と合流して…
―――ヒュー… ドンッ
楽しい時こそ時間が経つのは早く、もう既に花火も中間辺りに入っていた。
「たーまやー!」
「もっとしっかり叫ばんかぁ!!」
「うーわ、雰囲気ねぇ…」
「弦一郎がノリ気の時点で、こうなる確率は87%だったからな。」
「プリッ」
周りを見渡せば、叫ぶ真田に、指導を受ける赤也にブンちゃんにジャッカル。
それをクスクス笑いながら見る幸村に、普段と変わらずノートに書き込む柳。
(目ぇ悪くなりそう…)
まともに花火見てるの俺達二人だけだし…
―――ドンッ パラパラパラ…
「おおっ、俺今の好きだなー」
「昔からキラキラ光る物好きじゃったもんなー」
「キラキラ光るって… 子供扱いすんなっ!」
「Σえぇ?!」
そんなつもりは無かったんだけど…
「ふんっ!」と花火の方に向き直るのを見て、何故かすごく懐かしいと思った。
今まで、ずっと一緒に居たはずなのに…
「ほーら、お前も花火見ろ!
バカやって花火見てない奴らにめちゃくちゃ綺麗だったぞ。ってあざ笑ってやんだからな!」
「何じゃそれ…ι」
彼女が笑って、俺も笑う。
話題は違うけど、周りも皆笑っていて…
「(ああ、何だかすごく…)」
――満ち足りた気分だ…――
【俺/僕】の中で空っぽになっていたのが、ドンドンと満ち溢れて、溢れ出る…
今まで笑い合うなんて事は沢山あった。
でも、いつも空っぽだった。
今きっと満ち溢れてるのは、きっと彼女が居るから…
「のぅ、――」
「ん?何だ?」
そういえば、今日初めて名前を呼んだ気がするのに、今日1番の花火の音で聞こえない。
(もう花火もクライマックスなのか…)
だけど、ちゃんと届いていたみたいで、すごく嬉しかった。
この後の言葉に、もう躊躇いなんて無い…
「好いとうよ、――」
「…たりめーだ、バーカ」
ああ、本当にもう…
そこまで考えた所で、夢から覚めた。
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「おはよーさんっ、柳生」
「おはようございます、仁王君。
…おや、何やら機嫌が良いですね。
夢見でも良かったのですか?」
「…随分と懐かしい奴が出て来てのぅ。
名前も顔も覚えとらんのじゃけど」
「夢というのは起きると忘れてしまうものばかりですからね…
そのうち思い出せるでしょう。」
「じゃとええな。」
それは、近くて遠い、夏の日
女の子攻めが好き過ぎる今日この頃。
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