近くて遠い夏祭り


「それじゃあ、今日の部活はこれで終わりにしようか。」


「「よっしゃぁ!!」」


「何や急に元気になっとるのぅ」


「そういう仁王君も、今日は片付けが早いですね。」


「プリッ」



珍しく率先して片付けを開始した俺ら3人のおかげか、片付けはいつもよりも早く終わり、解散となった。



「俺、家族以外と一緒に祭に行くなんて初めてっす!」


「うわ、お前友達いねぇのかよぃ…」


「ち、違います!近所の祭ん時はいつも親戚の家に行ってただけっす!」


「そんな必死にならんと…

大丈夫じゃよ?お前さんの友達が少ないのは周知の事実じゃ。」


「Σ仁王先輩?!」



さらに必死になる赤也を小さく笑いながら、着替える手を早める。


もうそろそろ、不機嫌な彼女が乗り込んで来る…



―――バンッ!


「テメェらおっせぇよ!!」



ほら来た。



「一応女性なのですから、声をかけて下さいといつも言っているでしょう?」


「そうだよ?一応… 一応女の子なんだから。」


「おい、今何で二回言った?何故強調した?


「言ってあげようか?」



二人のじゃれあいを見て、またか、と笑う。



「精市、もう全員帰る用意は終わった。」


「あ、じゃあ行こうか。」



幸村が部室の鍵を閉めて、全員でそのまま近くの神社へ向かう。



「よっしゃ、まず祭と言えばタコ焼きだろぃ!」


「あ、丸井先輩!林檎飴ありますよ!」


「待ちたまえ!この人だかりで離れては…」


「まーええじゃろ、柳生。

あの堅物の真田でさえあんな状態じゃよ?」



神社に入ってから少しばかり楽しそうな真田を指差せば、仕方ないとばかりに溜め息をつく。



「あの二人が携帯の着信に気付く可能性は低いが、こちらさえ二人からの発信に注意しておけば、連絡は取れるだろう。」


「ジャッカルもついてるしね。」


「あ、もう迷子になる前提なんだ…

(ジャッカル、可哀相に…)」


「まぁね。さ、俺らも行こうか。」



先に行ってしまった三人から目線を外し、幸村達についていく。


一通り出店を見ながら、神社の境内に向かう。

境内の方は人が少なくて花火がよく見える穴場らしく、去年もここで花火を見た。


真田が持参したブルーシートを敷いて、場所取り完了。



「さ、ここからが祭の開始じゃ♪」



そう言って笑った俺がそんなに可笑しかったのか、全員にポカンとされた後、少し笑われた。



「えーじゃろー?楽しみにしとったんじゃから」



ちょっと不機嫌気味に言えば、幸村に「可愛いなぁ」と頭を撫でられた。


頭撫でられるのは好きだけど、今は…

そんな俺を察してか、彼女に手を引っ張られた。



「ほら、去年の射的屋のオヤジん所にリベンジ受けに行くんだろ?」


「、あー…」



彼女に言われて思い出した。


そういえば去年、射的の景品をほとんど取っちゃって泣かれたなー…

一応景品を一つだけ貰って返したけど、「来年リベンジするから来い!」って言われたんだっけ。



「ほら、行くぞ?」


「あ、おん」



手を引かれて階段を下りれば、他も一緒に下りてくる。


幸村は妙にニコニコしてるし、柳生は表情読めなくて…

え、何これ怖い…



「の、のぅ…」


「気にしたら負けだ。」


「あ、仁王、チョコバナナ食べない?そして頬張ってくれると嬉しいな」


「絶対に耳を傾けんな!」


「??!」




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