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俺の魔法使いな弟が同人誌を見てるわけがない!
俺たちの母さんはいわゆる『有名人』に分類される人間だった。占い師、なんて俺は今でも信じてないけど、この世の中に母さんを信じる人間はたくさんいる。その最たるが、俺の弟なんじゃないかな。

よくわかんないけど、あいつはよく魔法が何とかって言ってる。母さんを尊敬して、占いを習ったりいろいろとしていたくらいだ。

弟より二個年上の俺は、占いも魔法も信じない、ふつーの一般市民なんだけどね!

だって俺が人生をエンジョイするのは電脳世界なので。ゲームにスレ周回にアニメ鑑賞会、最高じゃないですかヤダー。

ーーってお兄ちゃんがピコピコやってたのがまずかったのか、あいつも学校でゲー研なるものを作ってしまうくらいにはゲームにも興味を示しているらしいが。くっ、俺があと一年生まれるのが遅かったら入ったのに、そのゲー研!

「ねぇ兄さん、現実逃避してるところ悪いんだけド」
「はっ!? なんだ夢」
「じゃないからネ?」

にこにこ。
わが弟ながら胡散臭さのレベルがカンストしてるほどの物騒な笑顔を浮かべ、お兄ちゃんにマウントをとってる男の子をどうしてくれよう。

「どうしたんだよ夏目、普通に邪魔だぞ」
「ひどいヨ、兄さん。ボクはただ、兄さんと親睦を深めようとしただけなのニ……♪」
「夜中の二時に親睦深めにくるな!!」

帰ってどうぞ! と叫びたい気持ちをこらえる。いや、どうせ今家に父さんも母さんもいないから、叫んでもまったく問題はないのだが。

はっ! まさか夏目、父さんも母さんもいないから寂しかったのか……?(名推理)

「兄さん、それは迷推理の間違いだヨ?」
「うわっ、心を読むんじゃない!」
「魔法使わなくてもわかるからネ、兄さんわかりやすいかラ。というか、マミィが居なくったって平気だヨ?」

いろいろひどいことを言われた気がする。

こうは言ってるけど、昔の夏目は結構泣き虫だったんだよなぁ……。よく「マミィはいないの?」って泣いてたし、そのたびに俺が慰めてたもん。よみがえるあの頃の素直な弟。今お兄ちゃんを完全に見下してる弟とは大違いってなものだ。

「あっそう。じゃあ、なんで来たんだよ」
「兄さんとセックスしにきたヨ」
「お兄ちゃん今忙しいから帰ってええええ!??」

いまとってもパンチ力の強いワード入ってなかった!?!? 聞き間違いかと思ってぱーどぅん? と聞こうかと思ったが、それよりも早く夏目が「だから、セックス」ってマジトーンで言ってきた。いやなに言ってんのこの子? 電波なの? 電波アイドル狙ってるの??

「弟はお兄ちゃんとセックスしません!」
「でもボクは兄さんが好きだもン」
「はぁ!? ありがとうございます! でもやらねえから! あれか、お前も母さんみたいに呪いにかけられた口かっ!?」
「普段は魔法も呪いも信じないくせニ、こういう時だけ使うの良くないよネ」

まったくの正論。でもその前にこいつが言った言葉が正論ではないのでドローですねわかります。

「いやだってもう、超常現象並みに意味が分かんねーもん! どういうことなの! お母さんに頼りたくなる俺の気持ちわかって!」
「マミィは今必要ないよネ。必要なのはボクと兄さんだけだから」
「俺の服を脱がせるんじゃねー!! 器用かよっ!?」

暴れる俺をものともせず、馬乗りになったまま片手で俺のボタンをはずしていく弟怖すぎワロエナイ。俺を見下ろす弟は、相変わらず顔面偏差値の高い顔で美しく俺に微笑みかけた。少女漫画の世界にいそうなので、俺じゃなくて女の子の前でその顔をしていただけませんかね!?

「大丈夫だよ兄さん、痛くしないから。約束する」
「こういう時だけマジトーンやめて!! 冗談にしてもキツイ!」
「冗談なんかじゃないんだけどナ〜?」
「なおタチが悪いわ!!」
「ううーん、どうしたら今からするってことが兄さんに伝わるのかナ? ジョークと思われるなんて心外だよネ」

こ、こいつ本気だったのかよーーーー!?!?
冗談じゃねえ! いや夏目的には冗談じゃなく本気らしいけど! なんなのこの弟心が一ミリも読めません! 助けて母さん!

「あ」

夏目がぱちっと目を瞬かせた。

「いま助けて母さんって思ったよネ」
「思った! めちゃくちゃ思ったから退け! お前の母さんも悲しんでるぞ!」

立てこもり犯に向かって叫ぶ警部のごとく言っても、まったく夏目は言うことを聞かない。

どころか、「いいセリフを思いついたヨ。兄さんの同人誌から拝借しようかナ」とか言い出した。こ、こいつ俺の同人誌見てやがったーーだと!? と俺が精神的ショックを食らいまくっているのをよそに、夏目はいつもの変な語尾をやめ、一言。

「兄さん、お前がマミィになるんだよ……♪」

やめて、俺がマミィになっちゃう〜〜〜!(ならない)
と叫んだほうがいいのかわからなかったが、とりあえず社会的に死亡する覚悟だけはできたから訴訟です。


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bkm