×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
白ウサギは行方不明 

「すまぬが、それは無理な相談であるな……」
「だよねぇ……」
「うむ。我も千夜殿には協力したいのだが、やはり蓮巳殿の手前、逆先殿には助力できぬのだ。許されよ」

かなり申し訳なさそうな顔をして、神崎くんが頭を下げた。慌てて「気にしないで!」と声をかけ、顔を上げてもらった。

一応こんな感じで、夏目くんと同じ学年の子にユニットを組んでもらえないかお願いして回っているのだ。しかし神崎くんのように、生徒会に縁のあるユニットの子はNGだし、そもそも既にユニットを組んでいる子は中々OKが出しづらい部分がある。何せ一年生だ、先輩に後ろ指をさされる可能性も否定できない。

それに、一年生の知り合いがそんなにいる方でもないのだ。さっそく知り合いが底をつきそうでマズイ。零さんのお願い、一応今までコンプリートしているので、今回もなんとかなると思っていたのだが……考えが甘かったかも。

「しかし……なぜ千夜殿が、逆先殿の『ゆにっと』の人員を探しておられる? 貴殿は月永殿の縁者では?」
「いや、頼まれたからさぁ……。ほら、夏目くんって自分で探しに行けるタイプでもないし」
「ふむ……それはそうだが。貴殿は頼まれごとに弱い御仁だな。ちと心配になる部分がある」
「うう、心配してくれる可愛い後輩がいるから平気よ……」

それに、無茶ぶりを振ってくるのは後輩でなく同級生なので。そういえば、神崎くんは苦笑した。彼の入ってる部活には、奏汰もいる。誰に私が振り回されているのか、だいたい想像がついたのだろう。

「しかし、フラれるのが前提のような『すかうと』は辛いであろう。ここらで一服しては如何か」
「それもそうねぇ……。神崎くんは、これから部活?」
「否。今から鬼龍殿のところへ向かい、衣装のほつれを直していただこうと思っていたところである。蓮巳殿からの紹介で改めて知ったのだが、あの方は本当に裁縫が上手いので助かる」
「そっか。あ、私も付いて行っていい? 衣装の縫い方教わってるんだけど、ちょっと分からないところがあってさぁ」
「うむ、ならば我と共に向かわれると良い! 露払いは任せられよ!」

すらり、抜身の刀(模造刀と信じたいがどう見ても白刃)を掲げる神崎くんに、少し苦笑する。

「あはは、敵襲はないでしょ。どっちの敵が襲ってくるのよ」
「むむ……確かにそうであった」

一応、生徒会寄りのユニットの生徒と、第三勢力、もしくは五奇人寄りの生徒だ。おまけに神崎くんは帯刀中。こんな奇妙な一行、誰も寄ってこないだろう。

「しかし、ほかに勧誘できそうな御仁はおらぬものか……」
「うーん……影片くんとか……」
「確実に無理であろうな」
「私も思う。聞く気すら起きない」

彼は宗くんの元以外では踊らないし、輝こうともしないだろう。夏目くんと仲良くするところも……うーん、想像しがたい……。

「そういえば、貴殿は最近演劇部に入ったとか。であれば、氷鷹殿などはどうだ? あれは義憤の徒と見た」
「ひだかくん? えっと、誰だろう……基本的に渉の猛特訓に付き合ってるだけで、他の部員の顔を覚えてないんだよね。あと、あんまり会わせてもらえないし」
「女子があいどる科にいるのは、かなりの一大事ではあるからな。そこはあの変態仮面殿の的確な判断のようだ」
「変態仮面殿って」

他のユニットの一年生にまでそう呼ばれちゃってるよ、渉。本人は特に気にしないだろうけど。

「明星殿は如何か。逆先殿のご友人であらせられるが」
「あ、ほんと!?」
「実力も随一のように感じられる。しかし問題は……少しばかり協調性に欠けているようで。出来合いの『ゆにっと』を組ませるには、ちと難しい」
「ああ……天才と天才とは同調しあえないっていうしね……」

例えば、レオと夏目くんを一緒に組ませようとするようなものだろう。絶対に制御できなさそうだ。この二人の場合は、案外仲良くなれそうな気もするが、仲良しと仕事の連帯は別問題である。

「もういっそ、全く他所の学校から引っ張り込むのも良い気がしてきた……」

弓弦くんの顔がちらりと脳裏をよぎった。彼、なんでもできそうだしなぁ……。しかも来年からアイドル科に入る可能性があるのなら、ますます有力候補だけど。

しかし神崎くんは、やめておけとばかりに首を横に振った。

「さすがに、他校となれば偽装は難しいであろう。千夜殿は一応、夢ノ咲の人間であるからして、偽装は容易いだけだ。学院の目を欺くという奇跡は、二度も起きぬよ」
「皇帝の力添えがなければ、ね」
「うむ……」

二人うんうんと唸るけど、結局名案は思い浮かばなかった。
期日まで残りわずか。なんとかして見つけたいけれど、これじゃ無理かも……。

無理だった場合はどうするか、そっち方面も含めて考える時が来始めているような気がする。そっちも追々考えていこう。


prev / next
(novel top)