Episode 6
「ニュース見た?『魔晄炉の爆発は 市民の敵アバランチの仕業だ』ってガンガン流れてるの。ゾクゾクするよね!」
仕事終わり、ティファが作戦会議に出たのでセブンスヘブンのカウンターで彼女の作ったコスモキャニオンを煽りながら足を休めていた。
そこに後ろから掛けられる声。
「顔バレしてないからここは安全だろうけど、いろいろ急がなくちゃ。
ねえ、次も一緒なんでしょ?」
視線を向けると、そこには俺を見つめるジェシーの姿があった。
まるで次に子供が友達と遊びの約束を立てるかのような声色だ。
「報酬次第だな」
「じゃあ決まり!わたしが推すから」
そこまで言って、ジェシーが小さくため息をつく。
「…ティファが行くことになってるんだけど、あの人、思想が揺れてるっていうか。」
ティファはアバランチの攻撃的な志向があまり得意ではないんだろう。
元々穏やかな性格だ、無理もない。
特に相槌をうつでもない俺に、ジェシーが続ける。
……その言葉に、俺は少し目を見開いた。
「ナマエちゃんと一緒にいるってのもあるとは思うから、分からなくもないんだけど。
ほら。あの子、神羅の兵器開発部門で働いてるから。」
「……神羅にいたのか。」
それで昨日は作業着を……
そうか、神羅で働いているのか。
「そうよ、知らなかった?
だからナマエちゃんの前でアバランチの話はタブーだからね。」
どことなく、彼女に後ろめたい隠し事をしている気持ちがする。
俺が壱番魔晄炉の爆破に関わっていたなんて言ったら、彼女はどんな顔をするだろうか。
……きっと、泣くんだろうな。
と、漠然と思った。
「それもあってティファは爆弾闘争にも乗り気じゃないから、いざって時にね……
こっちも命を預けるわけだから、それならあんたみたいな有能な人がいいもの。」
ジェシーがアバランチのアジトに行ってからも、考えるのはティファと……ナマエの事。
アバランチと神羅カンパニー、まさに敵対組織だ。
ティファは、きっと知っているのだろうな。
ナマエはどこまで知っているのだろうか、はたまた何も知らないか。
しばらくすると、アジトからティファが出てくる。
荒々しくカウンターの向こうまで歩いて自分に酒を入れると、ぐいっとそれを煽ってから席に座った。
グラスを握って俯いている。
作戦会議で、何かあったのか。
「作戦に乗り気じゃないらしいな。」
彼女の横顔に声をかけると、赤い瞳がそこで揺れているのが見えた。
「今までと同じやり方じゃなにも変わらない。それはわかってるんだ。でもなぁ、」
ティファは、ジェシーの言う通り荒々しい爆破だの戦闘だのに消極的なんだろう。
「ナマエのことも、関係あるのか」
そう尋ねると、ティファがはっとしたように顔を上げた。
そしてまた、グラスに視線が落とされる。
「聞いたんだ、ナマエの仕事のこと。」
揺れるグラスの中の酒を見つめながら、彼女が困ったように小さく笑った。
「うーん……どうだろう、あるのかもね。
あの子、どうしても妹みたいに思えちゃうから、辛い思いをしてほしくないのかも。
なんて言うか……」
俺に向けられた彼女の視線が震えて、俺に刺さる。
「かなりピンチ。」
「迷いがあるなら、やめた方がいい。」
俺の言葉にも、ティファは曖昧に笑った。
結局 作戦は明日に決行で変わりないらしく、決起会だなんだといって、身内でやりたいからと俺は追い出される。
バレットが言うには、今回俺は用無しらしい。
約束の報酬も受け取って、晴れて契約終了。
そのはずなのに、内心どこか面白くなかった。
まあいい、俺にはもう関係の無い事だ。興味無いね。