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「恋バナ?」

「たまにはみんなでしてみよーかって。」


何とも気色の悪い提案を誰がしたものか。
普通ならばこれは女子特有の話ではないのか。男子なんかが微かに香る男子特有のニオイをチラつかせるこの部室でやると言うものだから余計気色が悪い。
だけど既に集まっていたカップル組は床に座り込んでどうやら話し始める気満々らしい。
遅れて入ってきた俺と日向が渋々と円になっている隙間に座り込んだ。

…こんなときに恋バナなんてホント誰が言い出したんだよ。
どうすんだよ。これで日向に正常な女の子に対しての恋愛感情が芽生えていることを知ったら俺はどう立ち直ればいーんだよ!!

一人心の中で大パニックを引き起こしている俺なんか御構い無しに口を開いたのは木吉だった。


「お前たちはうまくいってるのか?」


木吉の隣にいる黒子と火神のカップルを見つめて言う。
そんな木吉の視線に気付いたのか火神が黒子を軽く片手で抱き寄せて自信ありげに言った。


「当たり前じゃないすか。」

「ボクたちも小金井先輩と水戸部先輩も赤司くんと降旗くんのところも大丈夫だと思いますよ。」


火神に抱き寄せられたまま、まるで天使のような微笑みで木吉に言って返す。
その黒子の言葉に小金井も水戸部も降旗もゆっくり照れながら頷く。
その幸せそうな笑顔がなんだかとても和んだ反面、やはり羨ましく腹立たしく思ってしまったのは俺だけではないと思う。いや、そう信じたい。
それに安心したのか木吉は「そうか、そうか。」とやけに嬉しそうに父親のような言動をとっている。

だけどホントに幸せそうな顔してんな、みんな。
降旗に関しては今は隣に赤司はいないけど照れてるのかうっすらとピンクに染まっている頬が見える。
可愛いな、オイ。

するとずっと聞き役に回っていた俺たちの方に視線を感じたので落としていた目線を少し上にあげると木吉に黒子、火神や降旗とバッチリ目があった。
そんな圧倒的威圧にほんの少し怖気づきながら


「な、なんだよ」


その視線の強さに意味を感じ取った俺は目を泳がせながら分かっていながらもそう聞いた。
問われた黒子たち本人も「分かってるくせに」と言わんばかりに頷いた。隣にいた木吉もそれに便乗したように頷いた。
こんなときにそんなチームプレー発揮しなくたっていいっつーの…!!
こないだのラブレターの件もあってか俺の現状がどうも気になるらしい。
隣にいる日向も俺の方に顔を向けている。
この空気は言うしかない。そんな無言の威圧を俺にかけてきていた


「こないだの子には、申し訳ないけど…って断ったよ。」

「そうだったんですか?…まさか先輩、好きな人いるんですか?」


こうなることが何と無く想像できたのかそこまで驚いていなさそうな面々。
そして黒子の一間を置いて放たれた発言に俺は流石に焦り出した。

直球に聞いてきたな…
オモテ面はそう思っていたのだが、中身では「いる。」そう答えたいと願っていたような気がする。
そうでもしないと日向との距離が俺的に縮まらない気がしたからだ。
これ以上なんの発展も見込めないのならせめて俺に好きな人がいるということで俺に興味を持って欲しい。
「誰なの?」少しでもそう思って欲しいからー…


「俺にだって好きな人くらいいるよ」


真っ直ぐ木吉や黒子の方を向いていたつもりだけど、心の中ではとびきり日向を意識していた。
こんなナヨナヨした精一杯の乙女みたいな恋愛してる俺に"男が恋バナなんて気持ち悪い"なんて言われたくないよな…
だけどそのあと誰も、根掘り葉掘り聞こうとはしなかった。

そんな空気に耐えられなくて、俺は次に何を思ってか口走ってしまったんだ。


「もう、こんな恋二度とゴメンだけどね。…っと、悪い。もう俺帰るね」

「あ、ああ…」


一生懸命に笑顔をつくって一刻も早くこの場から立ち去りたかった。日向の隣になんていたくない。可哀想な奴だなんて思われたくない。泣きそうになる残念な俺なんて誰にも見られたくない…
部室をでてから俺は一度も振り向かなかった。誰かに追いかけてきてほしいなんて願わない。
もういっそのこと、消えてしまいたい…

ーこんな恋、二度とゴメンだ。脈もクソもないこんな恋をしてて何になるんだ。俺はゲイか?気持ち悪いって馬鹿にされるのか?
だったら恋愛感情なんて捨ててやる…!!



「…先輩も大変だな」

「同情はダメだろ、火神」

「これは影ながら応援するしかなさそうですね」

「あれ、諦めたわけじゃないですよね?」


何?何を言ってる?俺の前で何を話してる?どうして俺だけが分からない?そして何故、みんな俺と目線を合わせようとしない…?
伊月の想い人は伊月の想いに気付いていない。
それだけは分かった。
こんな恋二度とゴメンだけどね…って?
どういう意味なんだよ。俺はいつまでこうして平常心を保てばいい?いつまで待てばいい…っ

隣にいた伊月は俺を置いて部室から姿を消した。
そして今の俺は完全アウェイだ。


「日向は、いるのか?好きな人。」

「んなこと聞いてどうすんだよ。俺帰るわ」

「お、オイッ!」


小金井に聞かれたが俺は答えなかった。
引きとめられはしたが、俺は踏み出した足を引き返そうとは思わなかった。

…そして今の俺は、いつになく自分でも分からない程に不機嫌だった。



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なんでこう、gdgdになるかな…
こんなん読める訳なかろーがorz

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