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 おじゃま虫

 好きって言って
 すきっていって

 ほかになにもいらないから。



「六臂」

 呼ばれると、笑顔になってしまう。また笑って、と思ってるきっと。下がる眉が可愛くって、俺は嬉しくなってやっぱり笑わずにはいられない。
 君の声が好きなんです。紡ぐ音のひとつひとつが、俺に話し掛ける柔らかい君の声が大好きなんです。

「わっ!」
「臨也!」

 飛びつくと、俺をうけとめて臨也がしりもちをつく。避けないでくれた、のが、びっくりするくらい嬉しかった。

「だいすき!」
「!」

 元気いっぱいの笑顔で言うと、臨也がぱちぱちと目を瞬かせてほんの少し口元を緩ませる。
 それから、ぎゅっと俺の服を掴んで胸に額を預けてくれる。可愛い可愛いどうしよう可愛い。
 好きと好きと大好きを合わせた気持ちの名前をはやく知りたい。名前なんてないのかも。だって俺が臨也を想う気持ちは、臨也以外の誰とも共有することができない大きなものだから。

「臨也、すき、すき、ね、ちゅうしよ?」
「ん、いいよ。目、つむる? つむってくれる?」
「つむって! 臨也のことずっとみてたい! ちゅうする臨也、みてたい!」
「……はずかしいよ、もう。」

 小指で髪を耳に掛けて臨也が瞳を閉じる。顎を上げて、赤い唇が薄く開く。淡く染まった頬に、影を落とす長い睫毛。可愛い、愛しい、臨也のぜんぶが狂おしいほどに自分を誘う。
 あのね、あのね。だって、こんなに好きなんだもん。
 頬に手を滑らして、柔らかさを確かめる。ふわふわ、マシュマロみたい。唇をおしあてて、舌で舐めてみる。マシュマロより、綿菓子みたいな甘い味がした。吸いついて、あまがみして、口づけてを繰り返していると臨也の手が鎖骨に触れる。
 はぁ、と漏れた息が甘くて、夢中になりすぎてたことを反省する。なぁにと聞こうとした言葉が音になるより先に臨也の唇が開いて、耳朶に触れていた手を制された。
 熱い吐息と、とろけそうな紅茶色の瞳がおいしそう。

 こくりと、喉がなった。

「ろ、ぴ……まだ今日は、たべちゃ、だめ…だから……」
「…………」
「ひぁっ、んっ」
「ん、……いざや、いざや」

 これは、いただきますでいいんだよね?
 唇に噛みついて、腰を抱き寄せて押し倒す。

「可愛い、臨也、いざや、かわいい」
「ふ、ぁう……わっあっこら!俺今日は用事あるって」
「臨也、いざやぁ」
「…………ッ、」

 そんなひどいこと言わないで。
 おあずけなんてつらいことしないで。
 俺は臨也が大好きだから、ごはんより睡眠より臨也を摂らないとしんじゃうの。

「ぅ、ぅ」
「いざや、いざや、おねがいいざや」
「う、でも、今日はほんとに、……んっ!」

 ちゅっ!って音がなる可愛いキスで臨也のほっぺがふにゃふにゃになる。
 こういうとき、なんていったらいいのか俺はね実はね知ってるんだよ!

「さきっちょだけだから!!」
「っその言い方はやめなさい!!!」

「びゃっ!」

 ばしん!と臨也の両手に与えられた衝撃で星が舞った俺の頭に臨也が追い討ちの頭突きをする。

「いっかい、だけだからね。」
「えへへ、むりかも。ゴメンネ。」
「なっー………ひゃっ!?」



 好きって言って
 すきっていって

 でもほかになにもいらないとかはやだ。

(あわよくばやっぱ、君自体がほしいんです。)


 君を好きでどうしようもない俺のために、君の日々をちょっとだけおじゃまさせてね。



end


2014/03/06

ミクさんのでした。





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