short | ナノ

 あさキス

ろっぴちゃんはキスが好き。

朝、起こしてねとお願いした時間にベッドの脇に座って優しくキスを落としてくれる。

初めてのときは戸惑ったけど、戸惑ってる俺を真っ赤な顔して窺うろっぴちゃんを見てろっぴちゃんがしたいならいいかと思った。

それから毎日、俺の朝はろっぴちゃんのキスで始まる。

今日も―…
重ねるだけの優しいキスと、慈しむように髪を撫でる繊細な手に微睡みからゆるやかに覚醒する。

薄く目を開けたときの、嬉しそうな笑顔が好き。

「おはよ、ろっぴちゃん」
「……ん、臨也、もう起きれる?お味噌汁、あっためて大丈夫?」
「ありがとう、今日はなんのお味噌汁?あまいのだと嬉しいなぁ」
「ほんとに?今日はね、カボチャとじゃがいものに、今から卵を落とすからあまいよ。よかった、臨也がほしいの、当てれた。」
「…………」

キュンとした。

ときめいちゃった。

こんなことでこんなにしあわせな顔してくれるの、世界中でろっぴちゃんだけだよ。

溢れる好きを隠そうともしないろっぴちゃんの、可愛い笑顔を見てたらどうしたって自信を持ってしまう。

愛されてるなって、
この子は俺を愛してくれてるんだって、
俺にこんなこと思わせるなんて、ろっぴちゃんの愛は俺なんかには計り知れない。

「ろっぴちゃん、ちょっと待って」
「ん、なぁに?」

こっち、と部屋から出ようとしてたろっぴちゃんに手招きして、身体を上げる。

おいで、手を伸ばすと躊躇いがちにろっぴちゃんの頬が添えられる。俺がしてほしいこと、ほんとに全部わかっちゃうんだなってまた笑えてくる。

「ろっぴちゃん、可愛い」
「え?」
「俺ね、可愛い子、だぁいすき」
「っ、ーっん、……ん、ふ、ぁ」
「……ん…」

溶けちゃいそう、蕩けちゃいそう。

宝石みたいな紅い瞳が俺のせいで熱に浮かされていくのが可愛くて、愛しくて、ああもう少し、こうしていたいなぁ。

息を継ぐタイミングで腕を引く。せっかく起きたのに、また寝ちゃった。もう今日は仕方ないな。

人間、欲求のままに行動することもたまには必要だ。

「い、いざ、いざや……?」
「んー…ろっぴちゃん、あったかぁー…」
「っ、あ、あの、あの……今日、お仕事……」
「お仕事とろっぴちゃん、どっちが大事?」
「えっ」
「答えはろっぴちゃんだから、お仕事なんて気にしなくていーの。」

腕のなかで固まるろっぴちゃんにお布団をかける。

なんどか髪をすいて頭を撫でると、ゆっくりゆっくり肩の力が抜けていく。耳を寄せなくても心臓の音が聞こえそうな震える吐息。
また塞いだら、今度は心臓止まっちゃうかもしれないなぁなんて、ちょっとあり得そうな気がするからもうどうしようもない。

お味噌汁と、自分と同じ香水の匂いごとろっぴちゃんを抱き締めて微睡みにかえる。

次に目をさますときは、俺が王子様になってあげようだとか可愛い悪戯を考えながら。


end

2014/01/07



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