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 初めての恋は。

*前サイトから引っ張ってきたのです。

『初めての恋は叶わない』の続きで両想いで付き合ってるのにうだうだやってるシズちゃんと臨也さんです。
静→(←)臨でシズちゃん視点です。



xxx


俺も、


と言われた。

信じられなくて、


夢かと思った









「もしもし、静雄っす。…突然すみません」

『おー!折原といっしょか?』

「それが、なんか帰られちゃって」


臨也が走り去っていった方に向かって立ち尽くしながら上司のトムさんに電話をかける


『どうしたよ、機嫌損ねるようなことしちまったか?』

「かもしれねぇです、どっちかっつうとアイツ機嫌よかったんで…笑ってたし」

『心当たりねぇのか?』

「………はい、すんません…」

『まぁ…わかんなくても謝んのが男だわな。正直に何が悪かったかわからないから教えてくれっつってみろ』

「はい、…ありがとうございます」

『おう、やっと付き合えたんだからこじらせねぇように頑張れよ』

「……うす」



トムさんとの通話を切って煙草に火を点ける



「もしもし、臨也…」

『ん、もしもし?』

「なんか気に障ることしちまったなら、悪かった」

『あはは、何言ってんの?仕事だって言ったじゃん』

「誤魔化すなよ…俺は、テメェに嫌われたら、嫌、だから」


『…………うん、ごめんね』

本当にうっかりしてただけだよ

と、臨也が笑う


「…臨也」

『ん?』

「好きだ、」



『ありがとう、俺も』

『じゃあタクシー乗るから電話切るね、ばいばい』





「くそ」

むしゃくしゃ、する


トムさんに部屋に連れてければいいと言われてはっとした。そうだ、そしたら臨也の奴ももう少し気ぃ緩めるかもしれねぇって

(新羅の隣りにいるときみたいに)


最初は、純粋に舞い上がっていた

電話すれば臨也が出て、緊張してるようにも聴こえて

会えば俺が緊張しちまって臨也の声に相槌打つくらいしか出来なかったが、臨也と話せるだけで嬉しいと思った


『今新羅のうちに居るから』

何回目かの電話から、毎回

いつもいつもいつもいつも

臨也は新羅のうちに居る



アイツに他の友達が居ないのは知ってるし、新羅にはセルティがいるから余計な心配をしたわけではない

けど、好きな奴が他の奴の部屋に入り浸ってるなんざ普通に考えて腹立たねぇわけねぇし

うらやましいともずっと思ってた


それで、今日のアレ、だ


いつものように新羅の家にいると答えた臨也の声がいつもより暗い気がした

なんかあったのか

心配で、走った


チャイムを鳴らしても出ない、一瞬がもどかしくてドアをぶっ壊して臨也を探す


無事だ、と安心したと同時に

新羅の肩にもたれ掛かってぽかんと口を開けていた臨也に殺意が芽生えた










「あ、仕事大丈夫か」

『うん、大丈夫だよ。今日はごめんね』

「いや、いい」

『ありがと』

「…………」

『…………』

「………」

『……シズちゃん?』

「臨也、明後日空いてるか」

『明後日…?昼からなら』

「改めて、うち来ねぇか」

『……………』

「……臨也?」

『……シズちゃん、君さぁ』



『………ごめん、なんでもない。行く、行きたい』

「あ、ああ」

ぎり、と歯を軋ませる音が聞こえた。なんだ?そんなに部屋来たくねぇのか…?いやそれにしては喜んでたし、来たいっつうし

まず嫌なら断るだろこいつなら


…………?

そこまで思考を巡らせて違和感に気付く

自分の気が乗らなければまず乗ったりしないのが臨也だ、臨也のはずだ。だけど

一回も断られたこと、ねぇよな

好きだ、と告げたあの日から会いたいという電話を断られたことが一度もない

それだけじゃねぇ、会ってるときに喧嘩売られることもなくなった


『ねぇ、聞いてる?』

「あ?」

『……もういいよ、とりあえず明後日用事終わったら電話するね』

「おう」




臨也が、わからない







『それで僕に電話されてもねぇ……』

電話越しにわかりやすく溜め息をつくのはもやもやの一端である新羅

臨也の事を、分かっているのはたぶんこいつだと思う。どういう意味でかは分からないが明らかに気をおかないでいるし、一緒にいる時間も長いし

……苛つく事実ではあるが。


『知らないよ。っていうか君たち付き合ってるんだろ?自分で聞いたらどうなんだい』

「っ……それができねぇからわざわざ電話してんだろうが」

『出来ないってなんだい?聞けない理由でもあるのかい?』

「そういうわけじゃ…ねぇ、けど…」

『とりあえず僕も暇じゃないから悪いけど切るよ。』

「…………」

『……ああでも、分かってると思うけどひとつだけ』

「あん?」

『臨也は嫌なことを断れないような奴じゃないけど、君に嫌われたくないから不満を言えないくらいには健気だよ』

「!」

『告白したからにはちょっとは臨也のこと分かる努力してあげなよ』


人に相談ばっかしてないでさ





プツンと電話を切った新羅は分かりやすく怒っていた

なんだよ、絶対わかってるだろコイツ

気づかない俺が悪いっついてぇんだろ、

「わかってんだよ、くそ」


でも、どうしろっつうんだよ

俺が聞いて

直接




『今更気づいたの?』


『何度も言ったでしょ。大嫌いだって』



『嘘だよ、嘘』




………………最悪、だ

アイツは俺を好きだっつってくれてるのに、疑っちまうなんて、何してんだよ俺は


何年間片想いしてたと思ってんだ、今更怖いなんて



(明後日、聞く、聞け)

(これ以上アイツを)

(信じれなくなる、くらいなら)


(覚悟を)



何年間もの、叶うはずがない片想いは


重く、動きと思考を奪う



(きっと、言えない)





end





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