ひどいひと
新臨で死ねたです。
苦手な方はご注意ください。
臨也はしぬ
いつかは分からない
明日かもしれないし、来年かも、もっと先かも
人間はいつかしぬ
ああそうか
なにも不思議なことじゃない
ただ、俺が、
君の愛した人間達が、
愉しそうに遊ぶ君を、二度と見られなくなるだけだ。
「意外だなぁ、君はこういうとき教えてくれないかと思ってた。」
「両親が今は海外だからね。妹たちに、最初に聞かせるのは酷だろう」
仄かに色褪せた家族写真をなぞって臨也が微笑む。
君にもそんな殊勝なところがあったんだね、と
言えば笑ってくれる気がしたけど、口角を吊り上げるだけで精一杯だった。
奇々怪々
そんな呪いじゃなかった。
医学で解明されていて
でも治すことができない無責任なもので
ならいっそ、現代医学ではなにも解りませんと言ってくれたなら自分は魔術でもなんでも縋ることが出来たのにと。
どんな顔をすればいいんだろう。君は、どうしてほしいんだろう。俺にどうしてほしくて、俺を呼んだの。
分からないから、今まで見せてきた顔を作るしか出来ない。
「お願いがあってさ」
「うん、いいよ。」
「……まだ言ってないけど」
「いいよ。どうせ君は断られないことしか頼まないだろう」
「……はは、だといいけど。」
白いベッドに横たわって、目蓋を落とすのをやめてほしい。
そのまま、消えてしまいそうで直視できない。
「一ヶ月に一日、それが嫌なら半年にでも、一年にでも、なんなら一時間でもいいから」
「俺のこと、いちばんにしてくれないかなぁ」
光の方に顔を向けて、呟いた声は震えてた。
ばかじゃないの、と言いたかった。
君はばかだよと
なんで、なんで俺なんかを
「ひとつきにで、いいの」
「それでも十分過ぎるよ」
「きみは、ばかだよ。」
「知ってる」
「でも、これが俺だよ」
言ってしまった言葉に、臨也らしい無邪気な笑顔で応えられる。
赤みがかった瞳を覗かせて嬉しそうに微笑むのをやめてほしい。みたくない。ねぇ、もう許してよ。
彼女を愛していることを、後悔なんてさせないで。
「うん、いいよ」
手を取って、跪く。
キスで目覚めた眠り姫のように輝いた瞳がぐさりと胸を刺した。
ほらやっぱり、君は俺に断らせてなんてくれないじゃないか
「今日が、一日目ね」
いたい、くるしい
涙だって零れそうだ。
君のことを一番に想っている人間なんてたくさんいるのに
君さえいれば他になにもいらないという人間がすぐ傍にいるのに
どうして君は、
俺なんかを選んでしまうの
君じゃない人を選んだ、俺なんかを。
(ごめん、ごめんね、今日だけだから、ほんの数時間だけだから)
(許して、セルティ)
彼の愚行を、
嬉しいだなんて思ってしまう酷い自分を
end
2013/05/29
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