笑わないで。
「臨也、二度と笑わないで。」
「は?」
「笑わないで」
笑顔を作るたびに、自分の寿命は削られていくらしい。どうしてそんな事がわかるのか、根拠なんてないだろうと笑った時の新羅の泣きそうな顔が自分にとってはどんな学術よりも確かな事実に思えた。
笑わないで。と言うことは、こいつは自分に『死なないで』と言ってくれているのだろうかと、そんなことでまた笑えてきてしまうのだから困ってしまう。
「なんなんだろうね、困ったな」
「本当にね。知らないままでいれたらよかった。」
「じゃあ言わないでよ」
「なんで僕が君のためにそんなことを抱え込まないといけないんだい?臨也に気を遣うつもりはないよ」
「そう。あは、笑わないって難しいね」
「……君ねぇ…生きていたいんだろ?ほら口角下げて」
「だめだよ、新羅の言動はいちいちおかしい。でもうん、そうだね。長生きしたいからちょっとだけ苦手な我慢をしてみようかな」
「うん、そうして。俺も君が笑わなくても我慢するから」
「それって我慢必要かな?」
「当然だろ。友達の笑顔が見られないなんてつらいよ」
「……お前は余程俺を殺したいらしいな」
「はぁ?死んでほしくないんだってば」
「ふふ、そうだったね」
今まで自分は、どれだけの寿命を削ってきたんだろうね。それはきっと途方もなくて、もしかしたら寿命なんてあとほんの少しだけしか残ってないかもしれない。
なら、ねぇ考えたんだけど
新羅の前でだけ笑って生きてみたら、俺の死因は新羅になるのかな?
それって、ねぇ
とっても素敵なことだと思うんだ。
「もう、分かってるのかい?……なにかあったらいつでも連絡してくれていいからね。」
「はいはい、ありがとうお医者さま」
最期の最後に『お前のせいだよ』と笑って言えたなら
ねぇ、そんなしあわせなことってないね
End
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