ゆるふわ逃避行
前半臨也さん視点でシズちゃん出てこない静臨、後半紀田くん視点で死ねたちっくな正→臨です。
逃避行するのは正臨です。
苦手な方は見なかったことにでお願いします。
すき、きらい、すき、きらい、すき、きらい
少しずつ貧相になっていく薔薇の花
ああなんでどうして、最後まで聞いちゃったんだろう。
「逃げたいなぁ」
「いいじゃない、逃げてしまえば」
「いいのかなぁ、逃げても」
「いいのよ。」
きらいで止めた薔薇を花瓶にさしてコートを羽織る。
丁度自分の階にいたエレベーターに乗って、なぜかマンションの目の前に停まっていた大型バイクに招かれる。
どこに逃げよう、宛なんてない。
躊躇っていると行き先を告げる前にバイクのエンジンが嘶いて、風が髪を撫でた。
どこへ連れていってくれるの?
心のなかで聞いてみても、
返事なんて返ってこない。
ことばにしない思いなんていうのはなにもないと同義だ。
どれだけ確信的な行動をしてしまったとしても、言わなければなかったことにだってできたはずだ。
なのに、なんで。
『なあ、いい加減観念しろよ』
(できるはず、ないだろう)
君はなにも分かってないんだ。
もしも君のことばが本物で、もしも俺と君のこころがおんなじで、
だとしても世界は君と俺だけでは構成されていないのだから。
観念して、その先にあるのは君を大切に思う人間たちの冷たいー……消えてしまいたくなる居心地の悪さに苛立ちを感じることは明白で、そんなこときっと気付いてくれない君に自分がどんな感情を抱くのか目に見えている。
どこへ向かうかわからないバイクは、それでも池袋とは逆方向だということだけは分かる。
逃げて、逃げて
いつかきっと、自分なんて忘れて誰からも笑顔を向けられる素敵なひとと結ばれる君をみたくなくて逃げ続けて
きらい、すき、きらい、すき、きらい
いつか捨てられると分かって、それでも好き?
「紀田くん、もういいよ。戻って」
「樹海にでも捨ててやろうと思ったのに。」
可愛い容姿にとても不相応なバイクを乗りこなす口の減らない少年の背中にもたれ掛かって目蓋を閉じる。
もしもこうして俺を迎えに来たのが君だったなら、このまま誰もいないところまで二人逃げてしまうのも吝かではなかったかもしれないね。
花占いなんかしなくたって
ほんとうは最初からわかっていたんだよ
(どれだけ傷ついても離れることなんて出来ないくらいに)
きらいと呟いた真っ赤な薔薇の花は、しおれる前に捨ててしまおう
*
もう少し傷心気分に浸らせてあげますよと嘯いて、海沿いの道路をゆるやかな速度で走る。
せっかく波江さんが予約してくれたテーマパーク内の高いホテルが無駄になってしまったことを怨みながら、自分からは口を開こうとしない背中の重みに話し掛ける。
「逃げんのやめんですか?」
「…逃げたところで、もうもとには戻れないから」
「ふぅん、珍しく諦めがいいですね」
「薔薇の花束持って告白されてどう凌げっていうんだよ…」
「じゃあ帰ったら晴れてアンタは平和島静雄の恋人ですね」
「……まぁ、そうだね。」
そう言う声は
少なくとも歓喜で震えているようには聞こえなかった。
アンタがそこまでして離れられないなにかを、もしも仮にアイツが持っていたとして
なら一生つらい思いをしてもそれは仕方のないことですねと自分は息を飲み込むことしかできない。
そういうもの、そうとしかできないものなんだ。
「………ねぇ臨也さん、」
やんわりと手に込める力を強くして呼んだ声は小さすぎて、臨也さんには届かなかったらしい。
聞こえなくったってもういい。
声を発した自分にだって、徐々に大きくなる風の音しか聞こえないのだから。
「もし俺がここで思い切って思いっ切りグリップを捻ったら、アンタは俺のもんになってくれんのかなぁ」
「え?」
自分も相手も失うことになっても失いたくないもの、
俺にもあるから。
出来ることなら最後にアンタの顔を見たかったかな
なんて
end
2012/9/3
とかいってたぶんしねないしころせない
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