なな

やっぱり幻覚じゃなかったのか

それともこれも全部幻覚なのか


とりあえずぶっ飛ばすつもりだったのに、さきに思考がぶっ飛んだ

………………


「あのさ、津軽島君、サイケ」

「なあに臨也くん!」

「どうした?」

「………狭いんだけど」




夢でみたまま白地に青の着物を着てソファーに座る俺の上に、抱きしめられるように臨也が座っている

しかも今度はその臨也の膝に凭れるように白とピンクを基調にした服を着てる臨也がカーペットの上で体育座りをして俺を睨んでいる



「シズちゃんが帰るまで我慢して、俺と津軽で臨也くん守ってあげるから!!」

「サイケも危ないから近づくな……!俺が臨也もサイケも守ってやるから!」

「つがるかっこいい!だいすき!」

「ん。」

「………」

「………」



「…………言いたいことも聞きたいこともいっぱいあると思うんだけどね…」


呆然としていると臨也がため息をつきながら口を開いた


「見なかったことにして帰ってくれると有難いんだけど」

「……できると思うか」

「だよね……サイケ、津軽島くん」

「なあにっ」

「ん?」

「お腹すいただろ、ご飯食べておいで」

「だめだ…!臨也になんかあってからじゃ遅いんだぞ…!!」

「……津軽島くん…」

「それに臨也くんといっしょに食べたいよ……」

「サイケ……」


ふたりにぎゅっと抱きしめられて臨也が息をつめる

んだよその顔、テメェはそういう過保護とか束縛とかめちゃくちゃ嫌いなはずだろうが

はず

だよ、な


俺によく似た男の胸にもたれ掛かるようにして臨也がふいと顔をふせる


「でも俺、頑張って作ったからふたりにはいちばん美味しいときに食べてほしいな…」

「「!」」

「俺、そんなに頼りない…?」

「……は?「っ臨也くんは頼りあるよ!ねっ津軽!」

「ああ…!悪かった、臨也…頼りないなんて思ったことねぇよ」

「ふたりともありがと。じゃあゆっくり味わって食べてきてね」

「はーい!いただきます」

「いただきます。食べたら戻ってくるな」

「うん」


(!)



くしゃ、と俺と同じ顔をした俺じゃない誰かが臨也の髪を撫でた

それを甘受して臨也が笑う


(夢、の)



見たことのない笑顔は自分に向けられてたんじゃない、のか


心臓のあたりが重くなる感覚がした

おかしい、


「で、あのふたりなんだけど」

「………」

「まず名前は俺に似てる方がサイケデリック臨也くん、シズちゃんに似てる方が津軽島静雄くん。」

「………」


「名前まで似てるんだよ、すごいでしょ?」


はは、と浮かべる笑みはさっきのとはまるで違う

俺が知ってる不愉快な

なのに


「なのに中身は似ても似つかないから不思議だよねぇ……めちゃくちゃいい子なんだよふたりとも。ふたりの知り合いが俺らをみたら彼らが天使にみえるだろうね」

はいどうぞ、と灰皿を出されて初めて自分が煙草を吸っていたことに気づいた

不愉快、なのに

いつもの人を見下したようなむかつくしゃべり方をしてるはずなのに、慈しむような、優しい目で臨也がふたりが座る食卓を眺める


「で、なんでそんな奴がテメェの家にいてんだよ」

「…………それは、成り行きというか」

「……?」


途中で言葉を止めて何を思い付いたのか分かりやすく悪い顔をする

見慣れた顔になぜか心臓の重みが増した

おかしい、ハラワタが煮えくり返るはずなのに


なのに、なのに、なのに


違和感に次ぐ違和感

ぐるぐると回り出した思考に、愉しそうに笑った臨也の口が止めをさす






「寂しかったから、かな?」




用意された灰皿を無視して机に煙草が落ちた





end



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