「ほないくでぇーっ!」 「こっちも準備OKや!」 私がAコート入りした、次の日のこと。 二人一組でペアを組んで行うラリー練習の時間中、コートの中に小春とユウジの姿を見つけた。将来ラブルスになるこの二人。今のところ、仲はそこそこといったところか。 そういえば、まだみんながちゃんとプレーしてる姿って見たことないんだよね。彼らの今の実力って、一体どれくらいなんだろう。 少し気になったので、私は順番待ちをしつつ様子を窺うことにした。 「今日は誰にするん?」 「せやなー、小石川とかどうや?」 「えぇんやない?ほな、いくでぇ!」 ……そっから見たのは、トンでもない光景だった。 ユウジの声が小石川そっくりになったのだ。更に、仕草や動きも本人そっくりだというのだから驚きだ。 私が知っている彼は、その上プレイスタイルも模倣出来てたはず。そのうち、今ここにいる彼もそうなるのだろうか。 あと、小春の方も凄い。どうやらデータを使ったテニスをしているらしく、風速や風向き、温度などまでは理解出来たが、それ以降もよく分からない方程式や公式を使って、そこから相手の打つ方向や球速を導き出していた。 青学の乾や立海の柳が派手にデータテニスを使うもんだからつい忘れがちだけど、小春も一応データテニスプレイヤーなんだよね。 このころから既に完成してたんだ、データテニス。 「白石!次は俺らの番やで!」 「……お、おん」 うーん。あんな個性的なプレー見せつけられた後だから、急に自信がなくなって来たな。 なんか、普通にテニスしてごめんなさいって気分。 「白石ぃー!もう打ってええかーっ!」 「いつでもええでー!」 そして私たちのラリーが始まった。 まずは謙也からのサーブ。ボールの速さは、まぁそこそこ。今の私なら打ち返せない球じゃない。ここは難なくボールを捉え、大事なのは次だ。 このラリー練習ってのが、簡単に言えば変則シングルス形式の練習だったりする。ネットプレーは禁止で、先に一球決めた方が勝ち、みたいな。勝ったからといって何か貰える訳じゃないんだけどね。やっぱり勝った方が気持ちいいし。 で、もちろん私は勝ちにこだわるタイプだから、ここは確実に攻めさせてもらう訳で。 「……はっ!」 前回克服したストレート。狙いは、まぁ悪くないとは思うんだけど。 「決めさせるかっちゅー話や!」 やっぱり、謙也なら追いついちゃうよねー。 ……もう少しコーナー寄りに深く打つ必要があるな。うん、反省。 「……これならどや!」 次はドロップショット。以前に比べたら精度は格段に上がってると思う。 だけど。 「甘いでっ!」 「っ!」 これも駄目。またも拾われてしまった上に、バックを突かれて私が辛うじて拾ったボールは、不安定な軌道を描いて相手のコートへ。 ていうか、謙也ってばまた一段と足が早くなってる気がする。 原作あたりになったら、やはり残像とか見え始めるんだろうか。 「これで終いや!」 最後に私が何とか返したボールは、そのままあっさりとスマッシュを決められてしまい、終了。私もだいぶ上手くなったと思ってたけど、まだまだだったみたい。 ……なんか、悔しいや。 |