このコートに入ってみて、分かったことが一つある。




それは、みんなとの壁。


壁、といっても別に仲が悪いだとか、そんなことじゃない。
みんなと私のテニスの間にある壁だ。




将来レギュラーになるみんなにはそれぞれに個性があって、彼らは着実にそれを伸ばして来ている。それ自体は非常に頼もしいことだし、喜ぶべきことだ。しかし、それと同時に私には少し不安に思うところがあった。






もしこのままみんなが原作のような成長を遂げていくのだとしたら。みんなが手の届かないところまでいってしまうんじゃないか、って。


まるで壁を挟んだ先にみんながいるような、そんな感覚がした。







私の願いはみんなと共に全国大会に行く、ただそれだけ。

とはいえ、全国大会に行くということは、原作と関わるということ。つまり、原作は避けては通れない道。みんなが強くなることは必然なのだろう。


だったら、私に出来ることは一つ。







「……越えたい」




壁を越える。



私がみんなと戦うためには、この壁を越えなくてはならない。そして、そのためにはもっともっと努力する必要があるんだ。








みんなが一つ努力するなら、私は千の努力をしよう。


みんなが一歩進むなら、私は百歩前に進もう。





確かに、私はみんなのような頭脳的なテニスやモノマネ、コートの端から端を一瞬で詰める足の速さなど持ちあわせてはいない。



それでも、そうやって少しずつでも前へ。







私が今進んでいるのは真っ暗なトンネルだ。そこでは何も見えないし、何処へどう進めばいいのか、自分がどのくらい進んだのかも分からない。
今は何も見えない暗いトンネルだけど、その進んだ先がきっと壁の向こうへ繋がることを信じて。







私は走り続ける。




(ここからが正念場)
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