芽吹く全てにこの歩みを

 帰ってきた懐かしい場所は、記憶の中より暖かい。当たり前だ。あれからもう一月も経っていて、今はもう春。ここはもう冬の海辺じゃない。じきに桜だって咲くだろう。学校にはいなかった。人に訊いても、そういえば、姿を見ないと言う。じゃあ一体どこだって、考えてみるに、一つしか見当がつかない。そういう訳で、まだ真新しい、誰かがつけた足跡が残る砂浜を一人歩いている。一月前とは逆の足取り。それで時間が巻き戻る訳じゃないけど、でも、歩くのを止めたりしない。あれから考えたこと、離れてから分かったこと、心に決めたこと、全部、伝えるために会いに行く。決めた道の先、歩く道の先におまえがいてくれたら、と思う。

[2011.05.01]

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