「秋だね」 「秋だな」 「食欲の秋だね」 「おまえは、いっつもそれだな」 「他に何があるの?」 「いや、いろいろあるだろ。スポーツとか、読書とかさ……」 「そっかぁ」 「そっかぁ……っておまえ……。ああでも、ホントもう秋か……」 「あれれ、佐伯くんセンチメンタル?」 「まあな。もうそろそろ一年終わるんだなーって思うと、ちょっと考えちゃうよな。秋が来て冬になって、そしたら、もう卒業だ」 「……そうだね」 「早く高校なんか卒業したいって思ってたのに、変なんだ。最近」 「佐伯くん……」 「今こうして一緒にいるけど、来年とか、俺たちどこで何してんのかな……」 「……………」 「……悪い。らしくないな、こんな話」 「佐伯くん」 「ん?」 「来年の秋も一緒にここに来よう? 今みたいに一緒に並木道を歩いて、それで、去年はあんな話してたんだ〜とか、思い出話しよう? それから、思い出話と同じくらい、ううん、負けないくらいたくさん思い出つくろう?」 「あかり…………あのさ、来年の話をすると鬼が笑うって諺知ってるか?」 「……知ってる」 「鬼に笑われるぞ?」 「いいもん。……それで佐伯くんが笑ってくれるなら」 「俺は鬼か」 「そ、そういう訳じゃないけど……」 「おい、そこで目逸らすなよ」 「いやあの、つい……」 「あかり」 「なに?」 「約束。きっと、そうしような、来年も」 「……うん、約束」 「……ああ、約束」 たくさん約束をした。 吹けば飛んでしまうような脆い関係も、そういう約束があれば、繋がっていられると信じたくて、わたしたちはたくさんの約束を交わした。 交わした約束の数だけ思い出も増えていく。きっと、これからも、ずっと。 2011.04.22 <-- --> |