27.ドラマ



(*ジ●リネタ)


明け方の街を自転車で二人乗りしながら、駆け抜ける二人。坂道を登るのを手伝いながら、街を一望できる坂の上へ到着。そこで、その日一番はじめの朝日を二人一緒に見る。まばゆい光の中、瑛くんはわたしに告白。頬を染めながら、頷くわたし。感極まったのか、瑛くんはわたしを抱きしめ、「あかり、好きだ!」と叫ぶ――、

「なんだこれは」
「わたしと瑛くんのドラマチックなハッピーエンド案プランAです。ちょっと恥かしいけど、こういうのもいいよね?」
「よくないよ! 何だよ、この、どこかで見た感…………待て、こういうアニメあったよな? 何だっけ、題名?」
「題名出しちゃうと色々ブッブーです、瑛くん」
「色々って何だよ?」
「ネタばれ、とか?」
「もう手遅れだと思うけど、色々」
「素敵だと思うんだけどなあ、プランA……」
「嫌だよ、こんなの。照れくさい」
「ええー」
「そんな声出したって無駄。断固却下」
「プランAが一番、オススメだったのになあ……」
「ちなみにプランBは?」
「『瑛くんは好きだ、でも、人間は許せない』と言うわたしに、瑛くんは『それでも構わない』と告げ『会いに行くよ、ヤックルに乗って』と……」
「ヤックルなんて、いません! なんだよ、その一見ハッピーエンドっぽいバッドエンド! じゃあ、プランCは?」
「わたしを巡って、瑛くんとライバルの色男が海辺で殴り合い、辛くも勝利をおさめたものの、二人は一旦離れ離れ。出発間際、飛行艇から体を乗り出して瑛くんにキス。瑛くんが自分自身に掛けた魔法がとけてハッピーエンド……」
「某アニメから離れろ!」

なおも、某アニメに準拠したエンディング案を捻出してくるあかりを取りあえず、無視する。あかりはドラマチックな物語をお望みらしい。――バカだな。思わず呟いてしまう。実際に口に出して。

「バカだな」

小さな呟きだったから、聞こえていたかは分からない。あかりはきょとんとした顔で「何か言った?」と訊いてきた。「なんでもない」短く否定して歩きだした。海沿いの道を歩きながら、夕焼けに染まる浜辺を眺めながら。

――昔々、この海で若者と人魚は出会いました。恋に落ちた二人は再会の約束に口づけを交わしました。やがて人魚は海へ帰り、海へ帰った人魚を探しに若者はある日、海へ船を漕ぎだしました。
そうしてあくる日。同じ海辺で少年と少女が出会いました。若者と人魚のように二人は再び出会うための約束を交しました。

それで充分じゃないか、と思ってしまう。自分たちはもう十分にドラマチックな出会いと再会をしているのに、それ以上を望むなんてバカげているし、下らない。他の物語なんかに頼らなくても、俺たちは俺たちのエンディングを目指せばいい。そんな事情を露とも知らないらしいボンヤリに向け、台詞と一緒に手を差し出した。

「ほら、行くぞ」



2011.04.06
*ジ●リをネタして心底ごめんなさい大好きです。
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