「…………おかけになった電話は只今、電波が届かない場所か、電源が入っていないかで、繋がりません」 「………………ふうん?」 「おかけになった電話は……」 「あかり」 「ただいま電波の……」 「いるんだろ、あかり?」 「………………」 「………………」 「………………」 「………………」 「…………ごめんなさい、瑛くん」 「……ったく。一応弁解は聞いてやる。今日、なんで来なかったんだ?」 「えっ、わたし行ったよ? 待ち合わせの場所に時間通りに」 「ウソつけ! 俺がどれだけ待ったと思ってんだ。待てど暮らせど、おまえの姿は一ミリも見当たりませんでした」 「こっちのセリフだよ! わたし、駅で一時間は待っていたんだから!」 「……ちょっと待て」 「それにヘンな人が声かけてくるし……え、なに?」 「おまえ、いま何て言った?」 「だからヘンな人が声を……」 「それも猛烈に気になる話だけど、その前。おまえどこで待ってたって?」 「え? 駅。はばたき駅、だけど?」 「はあ……なんだよ、もう…………」 「え? なに? なに?」 「あのさ、今日、俺たちはどこに行く予定だったでしょう?」 「え? カラオケだよね?」 「そう、カラオケ。嫌がる俺をおまえがしつこくしぶとく誘うから、渋々承知したカラオケ。で? おまえはカラオケに行くのに、どこで待ってたって?」 「…………あっ!」 「やっと気づいたか」 「ごごごごめんね、瑛くん……! 瑛くん、誘ってもあまり繁華街地区に来てくれないから、わたし、間違えちゃって……!」 「人のせいにすんな」 「……ごめんなさい」 「……あのさ、今度こういうことあったら、すぐ電話しろよ? ヘンな奴から声かけられたっていうなら、尚更さ」 「う、うん……」 「文明の利器はちゃんと活用するように。それで? なんで電話しなかったんだ?」 「その、瑛くん、忘れちゃったのかなって……」 「忘れないよ。忘れるわけないだろ、おまえとの約束を」 「えっ?」 「い、いや、なんでもない……! とにかく、今度は電話しろよ! 必ず出るから! いや、同じこと繰り返さないのが一番だけど、とにかく!」 「うん、わかった。……ね、瑛くん」 「な、なんだよ?」 「今日はごめんね。電話してくれてありがとう。また一緒に遊んでね?」 「……ああ、うん。じゃあ、またな?」 「うん、またね」 2011.04.06 *『電話しろよ』云々はわたしの心の叫びです。君たち、電話で連絡しあおうよ……! <-- --> |