20.留守電



「…………おかけになった電話は只今、電波が届かない場所か、電源が入っていないかで、繋がりません」
「………………ふうん?」
「おかけになった電話は……」
「あかり」
「ただいま電波の……」
「いるんだろ、あかり?」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………ごめんなさい、瑛くん」
「……ったく。一応弁解は聞いてやる。今日、なんで来なかったんだ?」
「えっ、わたし行ったよ? 待ち合わせの場所に時間通りに」
「ウソつけ! 俺がどれだけ待ったと思ってんだ。待てど暮らせど、おまえの姿は一ミリも見当たりませんでした」
「こっちのセリフだよ! わたし、駅で一時間は待っていたんだから!」
「……ちょっと待て」
「それにヘンな人が声かけてくるし……え、なに?」
「おまえ、いま何て言った?」
「だからヘンな人が声を……」
「それも猛烈に気になる話だけど、その前。おまえどこで待ってたって?」
「え? 駅。はばたき駅、だけど?」
「はあ……なんだよ、もう…………」
「え? なに? なに?」
「あのさ、今日、俺たちはどこに行く予定だったでしょう?」
「え? カラオケだよね?」
「そう、カラオケ。嫌がる俺をおまえがしつこくしぶとく誘うから、渋々承知したカラオケ。で? おまえはカラオケに行くのに、どこで待ってたって?」
「…………あっ!」
「やっと気づいたか」
「ごごごごめんね、瑛くん……! 瑛くん、誘ってもあまり繁華街地区に来てくれないから、わたし、間違えちゃって……!」
「人のせいにすんな」
「……ごめんなさい」
「……あのさ、今度こういうことあったら、すぐ電話しろよ? ヘンな奴から声かけられたっていうなら、尚更さ」
「う、うん……」
「文明の利器はちゃんと活用するように。それで? なんで電話しなかったんだ?」
「その、瑛くん、忘れちゃったのかなって……」
「忘れないよ。忘れるわけないだろ、おまえとの約束を」
「えっ?」
「い、いや、なんでもない……! とにかく、今度は電話しろよ! 必ず出るから! いや、同じこと繰り返さないのが一番だけど、とにかく!」
「うん、わかった。……ね、瑛くん」
「な、なんだよ?」
「今日はごめんね。電話してくれてありがとう。また一緒に遊んでね?」
「……ああ、うん。じゃあ、またな?」
「うん、またね」


2011.04.06
*『電話しろよ』云々はわたしの心の叫びです。君たち、電話で連絡しあおうよ……!
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