揺れるしっぽに首っ丈の彼 | ナノ

ただの男には興味ありません。


 お目当てのギャルゲーは無事に買えた。今更だがタイトルは『ハイスクールガールズ!』という。柳くん大好き神崎ちゃんがいるのは3で、今回出たのは4である。
 ひとまず私たちは分かれて、好きなところを回ることにした。11時半に店の前に集合するということになっているので、それまで存分に自分の時間を味わおうと思う。とりあえずBLコーナーに行って5冊ほど同人誌をゲットしたあとは、グッズコーナーを回った。柳くんの影響で『ハイスクールガールズ!3』にハマッてしまったので、その中でも特に好きな黒髪ツインテールのロリっ子のラバストを購入。
 それからも回りたかったが、残り10分なのでやめておいた。一つのコーナーを回るのに30分は最低かかるため、集合の2、30分後に行ってしまうなどざらにあるのだ。
 
 それから、店前で私はスマホをいじりながら柳くんを待った。友達がピクサブにあげたBL漫画をニヤニヤしながら読んでいたら、誰かに声をかけられた。

「俺らと遊ぼうぜ」

 アニマイトが全然似合わない、ど金髪でアクセサリーじゃらじゃらと身に着けたいかにもヤンキー男、二人が声をかけてきた。一人はものすごい数のピアスをしていて、もう片方は指輪と腕輪の数がすごい。全部でどれくらいの重さあるんだろう? って気になるくらい。
 東京に来るとこういう人に声をかけられるのは何度か経験したのでもう怖くない。今も全く怖くないといえば嘘だけど。ともかく、オタクな話をしたらたいていどこかに行ってくれる。

「私は今から帰ってゲームに熱中しなくちゃならないから遠慮しときます」

 私はゲームやら同人誌やらが入った青い袋をガサガサと揺らした。なにこれ? なんて言うからわざわざゲームを取り出して説明してあげた。

「可愛い女の子ときゃっきゃうふふして恋愛するゲーム」
「ふーん。俺たちは画面上じゃなくて現実の君みたいな女の子と遊びたいなー」
「私は画面上の女の子と遊びたいなー」
「ゲームは後でできるから」

 いやいや、今すぐがいいんだよ! それに私はただの男には興味ありません。男が2人以上いて、なおかつ恋愛してなきゃ興味ないですから! なんてちょっとBL趣味までは公言できないけど心の中で言ってみる。

 何度断っても諦めないチャラ男たち。しまいには私の腕を掴んで引っ張ろうとした。私は動くまいと足を踏ん張る。

「だから私、ゲームを……」
「後でもできるからとりあえず俺たちと遊ぼう。なにが好き?」

 くそっ、こんなにオタクアピールしても諦めてくれない。こいつら何なの!? 強者だな! うう…めんどくさい……私って絶対違う部類の人間じゃん!? もっとチャラチャラした子に声かけようよ。

「えっと、私は二次元の女の子と遊ぶのを優先したいし、それにそろそろポニーテール大好き変態さんが来て一緒に帰らなきゃならないんですー」
「なに? 男?」

 頷いた瞬間に、柳くんはちょうどよくアニマイトから出てきた。私はキラキラとした目を彼に向けた。柳くん、初めてあなたの助けを求めていたし、帰りを待ちわびていたよ。

「柳くん早く帰って素晴らしきゲームを……っておい!!!」

 柳くんなら瞬時に状況を理解して、ヤンキーたちを追い払ってくれるかと思いきや、予想に反してあろうことか、私を無視して歩いて行こうとした。こいつ、待ってやってたのに何なの!?

「ちょっと、柳くん! この状況でふつう置いてけぼりにするかな!」
「お前と同類にされるなど、甚だしいにもほどがある」
「ええ!?」
「お前、ゲームのことについて言っただろう。まさか俺のことも変なあだ名か何かで紹介していないだろうな?」

 ぎくり、しかし顔に出しては負けだ。それに、ポニーテール大好き変態さんはあだ名にしては長すぎるし、チャラ男さんたちもいちいち覚えてないだろうから首を横に振った。

「してないもん」
「え? ポニーテール大好き変態さんって言ってなかったっけ?」

 耳のピアスの量がえげつない方が言った。もーーーーなんで覚えてるかなーーーーー!!!!! 私は声を大にして言いたい。

チャラ男の記憶力、なめてたーーー!!!!

 なんて心で叫んでも後の祭り。柳くんの目がギラギラ怒りで光っていることは変わらない。ごめんなさい、ごめんなさい。
ばつが悪そうな顔をしていたら柳くんが口を開いた。

「ほう、ポニーテール大好き変態さん……」

 やばいやばいあの柳くんの目が今までで一番長く開いている気がする! 言っとくけどギャグじゃないです!

「覚悟しろ、苗字」

 ひいっ! 避けようとした時にはすでに柳くんの手は上がっていて、私の頭を爽快に二連続でパンパーンッ! と叩きやがった。

「い、痛い…」

 叩かれることは薄々わかってはいたけど双龍打ちみたいに2回連続だとは思わなかった。あの技、2回目の攻撃力は劣るけど、柳くんの攻撃は下がるどころか上がったからね。本気で痛い。

「大丈夫?」
「すごい音したよな」
「痛いの痛いの飛んでけー」

 ナンパしてきたチャラ男に優しくされる羽目になるなんて誰が予想したでしょうか。最近、柳くんがあんまりにも私に酷いからチャラチャラ男子だろうと心にしみるぜ……って言うのは冗談だけど。

 とりあえず、帰ろうよ……。

 っていうかもう一人で帰りたい……ゲームしたいってめっちゃ言ったけどやっぱりめちゃくちゃ眠たいから寝たいです……。お兄ちゃんに一番譲ってあげよう。その代わりに「おつかい代」請求するんだから。


******
あとがき
柳さんの暴力が日に日に強くなっている? ここでもたまには優しい柳さんも書きたいけどギャグにもしたいです。高難易度ですね……。
(~20180325)執筆

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