ゴミ箱 | ナノ


▽ りょましゅん(BL・雰囲気だけえろい)


舌を触れ合わせてキスをする。
目を開けたまま、視線を逸らさずに。
徐々に熱を帯びていく双眸を追い続けているうちに、

「―――いいか?」

同じくらい熱の篭った声がそう問い掛けてきた。
離れた唇も舌も、じんじんと痺れて上手く言葉が紡げそうもない。
そんなことを言い訳に何も答えずに目を閉じると、それを了承と取ったのか大きくて硬い手が俺の着物の袷を割った。

いいなんて言えるはずがない。
これは合意ではなく、俺は被害者だ。
俺に触れる指が濡れても、それは俺の意思ではない。

「瞬…」

囁く声と吐息がどうしようもなく震えていて、名を呼び返すことすら出来ない。
痛みも、快楽も、ただ一度のことなのだと自分に言い聞かせる。
立てた爪だけが現実だ。
俺が遺せるものなどそれくらいだから。

「しゅ、ん」

身体と心の奥深くに、その音を沈み込ませて、染み込ませて。
決して溶け合うことのない身体を今だけは重ね合わせる、境界すら曖昧になるほどに。

思いは、俺が全部持って逝く。
龍馬にはいつか消える爪痕だけ、深く赤く残して。

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