ゴミ箱 | ナノ


▽ ふくこま(BL・えろ)


時折、酷く求めたくなるときがある。
相手の都合など何ひとつ考えずに、ただ獣のように。
己が身に流れる忌まわしい血ゆえか、美しい花を手折りたくなるのと同じ衝動が身の内に宿る。

―――何も考えられず、ただ喰らいつきたい。

無理矢理引いた手の冷たさに、背筋に汗が伝っていった。


「ちょ、っと…一体何なの?」

薄暗い、灯りすら置かれていない廊下の隅、その壁に私は美しい人を押し付けた。
長い髪が羽織の背をらしくなく乱れた様子で纏わりついていて、その非日常にぞくんと腰が震える。
こうして無理強いをするのは何度目のことだろう。
何なのと尋ねておきながらも先を知っているからなのか動揺は最小限だ。

きちりと整った襟元をぐっと引っ張れば息苦しそうに呻いた小松さんは、またなの、とぽつんと呟く。
それには答えずに白い項に舌を這わせて柔らかな皮膚に噛みついた。

「っ、つ…!」

痕がつく手前で加減することも、小松さんで覚えた。
取り繕えるように着物を乱さないようにすることも。
袴の隙間から手を忍ばせて下穿きの上から握り込む。
目に見える部分を汚さないようにするためにも、小松さんの下肢を寛げるわけにはいかない。

「突然、すぎ、でしょ…っ」

赤くなり始めた耳元で荒い呼吸を響かせる。
布越しにも分かる熱と質量はどんどんと増すばかりで、押し潰すように身を寄せれば腰に当たる私のものに小松さんが唇を噛んだ。

「桜、智」

密やかな、あえやかな。
甘い掠れ声にたまらなくなる。

「…んっ」

湿り気を帯びた布地がくちゅっと音を立てた。
今すぐこれを取り払って存分に舐めしゃぶりたいのに、ここではそれすらままならない。
壁際に咲く麗人は逃げるでもなく私の手を好きにさせてくれていて、許されている、その事実にただ息が詰まった。

どこまで許されるのか、それを確かめたくて。
私は小松さんの首筋に血が出るほど強く歯を立てた。

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