花束に埋もれ



きっと君に見えていた、僕には見えていなかった夕焼けが街に落ちる。

こんなに真っ赤に染まったとこなんか、今日の今まで見たことなかった。

いつも振り返っては一瞬、泣きそうな顔をして笑顔になることは知っていたけれど。


彼女はいつも、この夕焼けを振り返りながら僕の手をとって歩いてたんだ。

よくこっち見るなぁ、って、 思ってはいたけど。


僕と彼女が通る帰り道はいつも同じ。

違うのは空の色と彼女の心象。


変わらないものを、

変わらなかったものを、

僕が壊したんだ。


君はもうここにいない。
戻ってこない。

側の電柱に花を添えて、薔薇の茎に指輪を通す。

君にあげたかった花。

君の大好きな花。

夕焼けで真っ赤に染まる花が、まるで彼女のようにきらきらしている。

守ってあげられなくて、ごめんね。



今日も僕は、彼女が愛した帰り道を、ひとり。

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