やきもちやいた
「うんうん、それで?」
「いつも通りにバズーカを使いやした」
おかしい。
すごくおかしい。
今日は久しぶりになまえとデートしていた。その途中に市中見廻りをしてる沖田と会って何故か俺達はファミレスでご飯を食べている。まぁ百歩譲ってそこまではいいとしよう。だが何故なまえの隣にアイツが座ってしかも仲良く喋ってるのかなァ!!?
「おーい、なまえちゃーん!」
「みんな相変わらずだね」
「あれ?無視?」
「男ばっかりむさ苦しい所でさァ」
「無視かァァァァ!!!」
「ちょ、うるさい銀時。私は総悟と話してるんだから」
ピシャリと言い放たれた言葉に反論しようと口を開いたが、それより先になまえが店員さんを呼んで『いちごパフェ1つ』と注文した。
「奢ってあげるから食べてて」
と言ったっきり、なまえはまた沖田との話に戻った。しかも沖田は沖田でニヤリと笑っている。
あー、銀さんグレちゃうからね!!!!
空になったグラスの氷をカラカラと弄ぶ。
なまえにとって沖田は弟みたいなものだと頭では分かっていても、心はそれを嫌がっている。
みっともないと思うけど仕方ない。だって俺はなまえが好きなんだから。
にこにこと楽しそうに話してるなまえと沖田を見ていると、心がモヤモヤしてくる。
…怒られてもいいや。
そう思い、俺はぎゅっとなまえの腕を掴んだ。
「銀時?」
「帰るぞ」
「えっ?」
財布から適当に金を出してテーブルに置く。そしてそのまま歩き出した。
「ちょ、ちょっと!何するの!」
「もう無理。銀さん我慢出来ない」
「は?」
声音からなまえが怒ってるのが分かるが、止まらない。止められない。
「…俺以外のやつと楽しそうに話すなよ」
「銀時…?」
これがどれだけ理不尽な事か分かってる。でも嫌なんだ。
俺に向ける笑顔を違う誰かに見られるのが。
あー、俺ってこんなに束縛する男だったんだ。
「………っ、ストップ!」
突然の大声にビクリと身体を震わせ、動かしていた足を止めた。
「歩くの早いから」
「あ、わりー…」
「別にいいけど」
肩で息をするなまえにどうすればいいのか分からず、彼女の息が整うまで黙っていた。
「…総悟は」
落ち着いた彼女の口から出た名前にぎゅっと眉根を寄せると、それを見たなまえは苦笑した。
「弟なの」
「………は?」
弟って…いや、でもアイツの姉ちゃんは確か…。
「土方さんはお兄ちゃんで、近藤さんはお母さん。神楽と妙ちゃんは妹で退と新八はペットね」
「なまえ?言ってる事が分からないんだけど」
しかし彼女は『長谷川さんは近所のおじさんで、お父さんは松平さんかなぁ。お登勢さんはおばあちゃんだね』と続ける。
「みーんな、私の大切な家族なの」
「家族…」
「うん。本当の家族はもういないけど、今はみんながいてくれるから寂しくないんだよ」
「…じ、じゃあ俺は?」
俺のポジションは一体何なのだろうか。
そう思っていると、なまえは満面の笑みで答えた。
「家族であり、大切な恋人」
「…………っ」
腕を伸ばして彼女を抱き締める。壊さないように、だけど強く。
「恋人と弟じゃ、どっちが大切かは分かるでしょ?だから妬いたって意味ないの」
「………あぁ」
「分かればよろしい」
なまえは満足そうに頷いた。
やきもちやいた
(さて、総悟に謝りの電話を入れてからデートの続きでもしますか)
(そうだな)
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