約束
「すみません、ベルゼブブさん。買い物に付き合わせちゃって」
「気にしないでください」
夕飯はもう食べ終わったのだけれど、アザゼルさんやサラマンダーさんが何か飲みたいというのでコンビニに行く事になった。ついでに日用品も買おうと思っているとベルゼブブさんが『女性1人では危険です』とついてきてくれたのだ。
無事に飲み物や日用品を買い、私達は袋をぶら下げて歩いていた。
「うーん、やっぱり星は見えませんねぇ」
見上げた空は相変わらず真っ暗だ。やはり地上が明るすぎるのだろう。
「星がお好きなんですか?」
「好きというか、星を見てると落ち着くんです。私って上京してきた身ですから」
「ご実家は星がよく見えるんですね」
「それはもう!天気が悪くなければたくさんの星が見えますよ。まぁ星座とかは分かりませんが」
どれが何座とか本を読みながらでも分からない。全てが同じに見えるんだよ、うん。
「ベルゼブブさんは好きですか?」
「空はあまり好きではありません。奴らがいると思うと怒りさえ覚えます」
“奴ら”とは恐らく“天界”の人達。ベルゼブブさん達悪魔にとっては神様や天使は憎むべき存在なのだ。
「…ですが」
小さく呟いたベルゼブブさんはゆっくりと空を見上げた。
「なまえさんと見る星なら好きになれそうです」
今が夜で良かった。だって明るかったら私の真っ赤な顔が彼にバレてしまうから。
「いつか僕と星を見に行きましょう」
「……はい」
「約束ですよ」
差し出された手に自分の小指を絡ませ、小さく上下に振った。
指切りげんまん
嘘ついたら針千本飲ます
指切った
約束
(いつか、必ず)
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