!治癒

「やはり、必要以上に体を酷使されていましたね」


「やはり?それはどういう意味だ」


「……水を浴びたい……」


唐突に少女が告げた言葉に少し思案してからアラウディが確認する


「君の回復行動は水浴びかい?」


「(こくっ)
水を浴びると……気持ちいいから」


「では、私のバスルームを使ってください。エレナ、案内をお願いします」


「ついでに体も流してあげるわ。行きましょう」


「……うん……」


エレナに連れられて少女はゆっくりとバスルームへと向かった


「……まずは、彼女についてお話致しましょう」


「それは僕から話してあげるよ
彼女はエディルレイドと呼ばれる人間とは異なる存在。今でこそ人と変わらない姿だけれど、彼女の種族は人間と契約を交わすことで形態を武器に変えることができるんだ
その代わり、希少とされているからか裏では高値で取引されていたり、実験の道具として扱われてしまうことが多い
多分、彼女もその類いだろう」


「ちょ、ちょっと待て!
ならば、あの少女は実験の道具にされていたということか!?」


「多分、ね。彼女には追っ手がいたんだ。その可能性は高いだろう」


皮肉な話だよね、と付け加えてアラウディは足を組み直す


「もちろん人間とは内部から構造が異なりますから、専門の医師がいます
そのうちの一人が私です。エレナと出会ってからは引退しましたがね」


「人間が、武器に……」


「今まで僕が見てきたエディルレイドは剣や曲刀に姿を変えた
彼女も何かしら武器になるんだろうけれど、あまり刺激はしないほうがいいだろうね」


「……ジョット、君にこの話をしたのは貴方を信じているからです」


「は……?」


訳が分からないという表情を見せるジョットにスペードはわざとらしく大きな溜め息を吐く


「彼女を人間と異なる存在だと知っても尚、受け入れることが出来ると信じているからですよ」


「あの少女がそのエディルレイドとやらで命を狙われているならば、俺は助けるだけだ
人間じゃなくても見た目は人と変わらないだろう?」


「君に言って悪い方向にはいかずに済みそうだ」



「ジョット、戻ったわよ」


「エレナー!」


「あらあら、甘えん坊ね、スペード
スペードの言っていた通り、外傷は殆ど消えていったわ。ただ……」


「ただ?」


「服が無いのよ。今回はこの前に貰い物の服があったからよかったけれど
彼女に合うサイズが無いのよね……」


「ならば、明日にでも買いに行こう
スペードもアラウディも任務だからな。俺が同行する」


「それは助かるわ
じゃあ、明日買いにいきましょう!」


「?」


不思議そうに少女はジョットとエレナを見比べている
そこにアラウディは近づき少女と目線を合わせるようにしゃがみ口を開いた


「君の名前は?」


「僕の名前は……」


「あ、本名は言わなくていいよ。君達にとっては生死に関わることだ」


「でも、真名しか知らない……」


「真名しか持たないの?
じゃあ、ここで名乗る名前、つけてあげる
君の外見は東洋人に近いから、僕の名前から取って「雲雀」。それから、君は恭しいから

雲雀、恭はどうだい?」


「…!!…嬉しい……
雲雀、恭……僕の名前……!」


パァッ……!と効果音が付きそうなくらい嬉しそうに目を輝かせる少女、もとい雲雀の頭をアラウディは撫でた


「よろしくね、恭」


「うんっ」




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