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 結局、千春も交えて三人で夕食を食べた。
 寮の門限があるらしいので既に帰った後、侑莉は洗い物を片付け、巧はぼんやりとテレビを観ている。
 
 何の事はない、普段通りの静かで穏やかな時間が流れていた。
 
 ガチャン、バタンッ!
 
 玄関の開閉音と慌しい足音が近づいてきたかと思うと、その勢いのままにリビングのドアが開いた。
 
 侑莉は驚きに食器を落としそうになってヒヤリとした。

「ど、どうしたのお父さん……」

 侑莉と目が合った瞬間、がっくりとその場に崩れ落ち床に手をついて打ちひしがれる父親が、どうしてそんなにもショックを受けているのか分からない。

 そんな泣きそうな顔で見られても、と戸惑った。

「間に合わなかった……親子水入らずの食事が……」

 多忙な身である父親が、侑莉達と食事が出来る時間に帰って来られる確率はかなり低い。

 だからこそそんな日は貴重で、衣服の乱れも気にせず飛んで帰ってきたというのに、二人の子ども達は無情にもさっさと済ませてしまっていたのだ。

 この絶望感は果てない。

「早く帰ってくるなら言ってよ! 分からないじゃない」
「驚かせたかったんだよ……」

 力なく立ち上がってよろよろとキッチンのイスに座る。
 僅かに巧が嫌そうにしたのには気づかなかった。

「まあ二人の顔見ながらご飯食べられるだけで良しとしよう。というわけで巧、こっち来なさい」

 こそこそとリビングから出て行こうとしていた巧に目敏く気付いていたらしい父親が手招きする。

 巧は舌打ちをしながらも大人しく戻ってきた。
 なんだかんだと言って父親に反抗しきれていない弟に侑莉は忍び笑いをした。
 そして彼女も巧の隣に座る。

「その、なんだ。どうだ巧、学校は慣れたか?」
「もう二年目なんだけど。どんだけコミュニケーション取れてない親子の会話だよ」
「何か言いたい事あるなら早く言ったら? お父さん」

 あまりダラダラと無意味な会話を続けては巧が今度こそ自室に篭ってしまいそうだ。

 まったく、たまに顔を合わせても喜びもしてくれないのか、この子達は!

 不満たらたらな顔をして、侑莉の助け舟に父親は渋々乗った。

「実に言いにくい事ではあるんだがな、隠していてもしょうがない。お父さん再婚しようと思ってるんだ」
「……うそ」
「うん、大うそ。そんな重要な話ってわけじゃなくてな」

 ガタタ、と子ども達は二人同時に立ち上がった。
 ご飯を頬張っていた父親は噴出しそうになり、手の甲で押さえた。何事が起こったのか。

「風呂」
「片付けの続きしよっと」
「ちょっとちょっと二人とも! 座って話し合おう、な」

 テーブルを叩く。
 この父親は自分の冗談の性質が悪いのだと知らない。巧は再度、忌々しげに舌打ちした。



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