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 既に侑莉が店に入ってから三十分が経過している。
 面接と称してオーナーと侑莉が奥へ引っ込んでからもうに十分強。

 希海達はそれなりに気になるものの、盗み聞きをするわけにもいかず、大人しく仕事をしていた。
 
 午後も二時をまわると客足も疎らになり、希海と頼が商品を整理していると、バックルームから大音量のオーナーの笑い声がした。

 二人は目を見開いてオーナーがいるであろう方向を凝視する。
 さらにその後には侑莉の非難めいた声も僅かならが届いてきた。

「な、なに?」
「知らね。でもかなり面白そうだってのは伝わってくるな」

 暇だし行ってみるか、と再びバックルームへ。
 何のために今まで我慢していたのかと問いたくなるくらい、あっさりと決めた。

 そして入った途端に目に飛び込んできたのは、お腹を抱えて笑い転げているオーナーと、不機嫌そうにそっぽを向く侑莉だった。

 ある意味予想通りで、そして奇妙な光景。

「あっはは! 親父さん最高!!」
「最低ですっ! 全く笑えませんから!」
「いやいや。はー苦し! あれ二人ともどうしたの」

 目に涙まで浮かべているオーナーがポカンと口を開けた二人に気付く。

「オーナーのアホバカ笑いが聞こえてきたから」
「アホバカは余計! もうねぇ、侑莉ちゃんっていうか、お父様が素敵すぎて」
「だからっ!」

 あの人のどこらへんが!?
 気が楽になるかもとオーナーに話したのに、逆に気が重くなってしまった。
 まさかこんなにも笑われてしまうなんて。
 少しくらい、ほんの少しくらいは同情してくれたっていいのに。

 やるせなさに机に突っ伏した侑莉の肩がポンと叩かれて顔を上げると、笑顔の希海が。

「いい所なんだよ」

 フォローなのだろうが、その言葉に真実味と説得力がまるでない。
 だけど、頼とオーナーの

「で、どんな話だったんだ?」
「えぇー? それはボクの口からはぁ……」
「ニヤニヤしてんじゃねぇよ」

 というやりとりを聞いていれば、やっぱり人間関係は確かに良いのだろうと何とか思い直す。

「えと、これからよろしくお願いします」

 深々と頭を下げた侑莉を、三人は笑顔で迎え入れた。






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