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 材料やソースは同じなのだから、味は確かにそうなのだけれど。
 イカ焼きともまた違う、何とも言いようのない歪な形状だった。
 マヨネーズでその上に猫や犬の絵が器用に描かれているのが和やかだが、何かが誤魔化されているような気がする。

「ほんとこの学校って変わった子多いよねぇ」

 固まっている皐月の隣で、静矢がおかしげに言う。
 以前、どこかで誰かも同じような事を言っていたような気がしたが、誰だっただろうか。
 
 千春だったかもしれない。侑莉がそう考えているのを見透かしたようなタイミングで巧が問うた。

「千春にはまだ会ってないのか」
「あぁうん、もう少ししたら」

 侑莉と巧は時計で時間を確認した。

「なら生徒会室使えば? こんな人だらけの中でするような話じゃないだろ」
「いいの?」
「千春だって役員だからな」

 鍵を侑莉に渡して巧はクラスのテントに戻っていった。
 身内の欲目も手伝って、良く出来た弟だと一人感動する。
 また今度お礼しようと思いながら、鍵を鞄の中にしまった。

「千春って……」

 久しぶりに聞いた名に皐月は目を見張った。
 
 何度か会った事のある、巧と侑莉の幼なじみの男の子。
 けれどそれだけじゃないと知っている。
 今更何を。そんな視線を受けて侑莉は苦笑した。

「退路を絶つため、かなぁ。私はすぐに誰かに縋ろうとしてしまうから。きっと香坂さんにフラれて私が傷心してたらハルくんは放っておけないと思うの。でもそんな事したら二年前……、もっと小さい頃から何も変わらない。また同じ事の繰り返しになる」

 だから今度は。今度こそは二の舞にならないように。
 もう幼なじみにも戻れないかもしれない。
 でも侑莉にはそれだけの事をしたのだという自覚がある。

 彼はまだ笑い掛けてくれるけれど。決してそれに頼ってはいけないのだ。

「宮西さんの決意って重いね」

 巧にもらったたこ焼きもどきを完食した静矢は関心したように言う。
 聞き捨てならなかったのは皐月だ。

「なに、静は軽いノリで私と付き合ってるわけ」
「違うよ! そりゃ俺も一大決心で大勝負に出たけどね。何て言うか、相手への気持ち以外のものが大きい気がする。うん、そういうのって邪魔だよね、判断鈍らせるから」

 静矢の言いたい事はよく理解出来た。
 凌が好きで、それは間違いないのに、気にしてしまう過去と自分以外に凌に好意を寄せる人の存在。

 だから侑莉は逃げた。

「でもそういうの全部集めたのよりも、好きな気持ちが大きくなるのが俺は早かったってだけ。皐月もね」
「……まぁ、そうかな。侑莉は時間が掛かったからこそ、ちゃんと伝えないとね。大丈夫、フラれたら私達がいくらでも慰めてあげるから」
「皐月……」

 ありがとう、ありがとう。
 皐月に抱きついて、何度もそう伝えた。





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