▼page.7 大祭のメインイベントとして、豊穣の神フライアが湖に降臨して踊りを披露して大地を豊かにするっていう、まあよくある類の儀式を披露するらしいんだけど。 しかしその神様の役をやる女の子が家出をしてしまったのだそうだ。 それだけなら代理を立てればいいんだけど、どうも儀式で重要なアイテムを持って出て行ったというから大問題。 いやちょっと待て、女の子が家出をした時点で大問題でしょうが。なんでそこはあっさり流されてるの!? おじさんにこの話を聞いて盛大にツッコんだ私でした。 しかしおじさんはのんびりとした口調のまま 「まぁ、よくある事だから」 よくあるの!? すぐ家出しちゃう子なの!? とんだ困ったさんだな、やっぱり問題じゃないか大問題児じゃないか! そしてそんな子によくも大事な役目を負わせたもんだな。 最初から期待してたわけじゃないんだけど、ちょうどいい年頃と容姿の子っていうのが少ないから消去法で決まったらしい。 けど本人に伝えたところ 「まじか! 絶対嫌だし! じゃあちょっくら大祭終わるまで家出るわ、戻らんわ」 というような感じで飛び出して行っちゃったらしい。 大人達も大人達で、ああやっぱりダメだったか、と少しがっかりしたものの引きとめもせず、代理を立てて終わったという。 そこは全力で引き止めようよ! ていうか代理立てられる子がいるなら、最初からその子選んでおけよ。 代理の女の子はすんなりと快諾してくれたのでよしよしと一安心したの束の間、なんという事でしょう、儀式の中で重要なアイテムである鏡が消えているではありませんか。 祭具がしまわれている倉庫に安置されていたはずの鏡がない事に気付いた大人達は、即座に家で娘のせいと判断した。 判断しちゃったんだ、そこ疑う余地ないんだ!? で、すぐに女の子をとっ捕まえればいいんだけど、そうもいかない理由があった、とかいう話をつらつらと聞いた。 我慢できず何度かツッコミを浴びせかけてしまったけど、おじさんは気にせず、というか完全スルーでマイペースに語り続けていた。 何気にこのおじさんのキャラが面白いと思う私。先の展開が読めたのか溜め息を吐くディーノ。湖に映る自分の姿にうっとりしているソレスタさん。 果たしてこの中で一人でも真摯に話を聞いていた人がいただろうか、いやいない。 語り手が語り手なら、聞き手も聞き手だよね。 つまり私達が少女捜索隊になりなさいよ、とそういう流れです。 少女が家出先に選んだのは町から少し離れたところにある森だそうで、そこまで分かってんならさっさと連れ戻せばいいのだけれど、その森が問題なのだとか。 森には獣族が住みついていて迂闊に踏み込めば襲われてしまうので、町の皆は二の足を踏んでいるらしい。 おいちょっと待て、なら尚更早く探しに行けよ! と思った私の方が正論のはず。 どうしてキリングヴェイの人はこんなにのんびりしているのか。 まあ仕方がないので騎士と魔術師、そしてユリスの花嫁である私の出番です。見事女の子をしょっ引いて尚且つ鏡を持って帰ってみせましょう。 ひゃっほーい行くぜおらぁ! テンションが上がりまくりな私。 なんだかテレビで見た、幻の部族やら動物やらをアマゾンの奥地までわざわざ見に行く探検隊、あれになった気分だ。 率先して行く気満々な私にディーノが待ったをかけた。なんでや。 「町の人が危険だと言ってるんですよ、ダメに決まっているでしょう」 「えー。騎士さんはこう言うんですが賢者さんはどうですか。私お留守番ですか」 ふざけんなよ、あの屋敷に一人で留守番とか! ある意味森より危険なんですがそこんとこどう思う!? 行ってもいいと言え! という念を込めてソレスタさんを見る。 彼は分かってるわと言わんばかりに、ばちこーんとウィンクかましてきたので、神剣白羽鳥の要領で私にぶつかる前に取っておいた。 前 | 次 戻 |