▼page.2 「グレーって何者なんだろう」 「グレーって誰よ」 「あ、間違えた。レイ」 「間違えようがないでしょうその二単語!?」 にたんごってへんなたんご。あ、煮卵食べたくなってきた。日本食から遠ざかって久しい気がするなぁ。 こっちの世界に来てそろそろ二週間が経とうとしている。 カレー食べたいなぁ、あれカレーって日本食? 「ちょっと、今全然関係ない事考えてるでしょ」 「バレた! ちょっと飽きてきたのバレた!」 「人を呼びつけておいてよくもまぁ」 ごめんなさいよっと。私足を負傷してて部屋から出られない身ですのでね。 少しでも歩き回ろうものなら、目ざとい侍女様がチクチクどころかグサグサと小言言ってくるのでね。 ルイーノは将来嫁姑問題が勃発しても勝ちそう。 うん、色々と情報が頭の中に入ってきたのでちょっと整理してみよう。 まずルイーノは最強。これは揺るぎない事実。後は 「私を召喚したのはディーノだと思われるけどレイの可能性も否めない。でもユリスを介さない限りはこちらに通って来れないので、牢屋に閉じ込められてて儀式を行えなかったレイが個人的な術で私を呼ぶのは不可能。つまり私をタダのレイの使い捨ての駒扱いしたディーノの予想大外れ! ざまぁバカディーノ!!」 「ハルちゃんの中のディーノの株が大暴落してるわねぇ」 「デフレスパイラル!!」 今はディーノの事を考えれば考える程腸が煮えくり返りそうになる。まさに負の螺旋! ディーノの全財産つぎ込んで日本の景気に光を! もう私何言ってんのか分かんない! ふぅふぅ、エキサイトしてしまった。 「そうだ、あと一つ聞きたいの残ってたんだった。どこぞの人格破綻者が私が元の世界に戻れる条件は、レイかディーノのどちらかがこの世から消える事だと言いやがりましたが、これについてどう思います?」 「発言者に対する悪意が見え隠れする言い方ね……隠してるはずなのに、誰が言ったのか透けて見えるわ」 そりゃそうよ、該当者なんて一人しかいないんだから! ディーノの株が下がったからって自動的にレイの方が浮上してくると思ったら大間違いだ。 「なんて言うか、極論過ぎて返事に困るわねぇ」 「あの人は、その為に私を連れてきたんだって言ってた」 「前にも言ったと思うけどユリスはバランサーよ、世界の均衡を保つのが役目なの。だからたかが人間一人の命の為に使いを送るなんて有り得ない、のだけれど……」 「だけれど?」 溜めるなぁ。ソレスタさん焦らすなぁ。流石賢者。話術を巧みに操りよるわ。 ごくりと唾を飲み込んだ。 「レイもディーノもお互い力が強すぎる。どちらかが失われるだけで、バランスが崩れるとしたら」 「そ、そんなに!?」 見くびってたわ! あの人達ってそんなすごい力持ってたんだ!? 一人は聖騎士だしもう一人は賢者の弟子だし、そりゃあ一般人とはかけ離れてるだろうとは思ってたけど。ソレスタさんから見てもあの二人は規格外らしい。 「もしくは、どっちかが死んだその後に起こる事態に備えてのユリスの花嫁なのかも」 「どんな事態!? 嫌だよそんな後味悪いの!」 事後処理班って事ですか!? 絶対やだ、人が死ぬとかそんなの考えたくもない。 自慢じゃないが、知人にも身内にも未だ不幸は訪れてないから、私はこの歳まで一度もお葬式にも行った事ない恵まれた人生を送ってきたのよ。 そんなのはとても縁遠いものだと思っていたのに。 またしてもレイの持論はグレーゾーンだった。マジでこれからグレーさんって呼ぼうかな。 「他に質問は?」 「今のところはない、かな」 結局何が分かって何が分らないのか、それさえ分らないというややこしい状況はあまり変わらないけど。 人に話して意見を聞いてみて少しすっきりした。 優雅にソファに座るこの大賢者さんでさえ、曖昧な答えしか出せないこのイレギュラーな事態を、私なんかが謎解けるわけもない。名にかけるような親族もいません。 「また何か疑問が出てきたら呼びなさい」 煌びやかに微笑んでソレスタさんは部屋から出て行った。あれでなかなか多忙な人なんだ。 お忙しい中本日は本当にありがとうございました。 さってと、今日のノルマは達成したな。うん、ソレスタさんの話聞いてただけで頭パンクしそうだ。 これからどうしよう。 ホズミの散歩がてら塔の周りをうろうろしてみようか、図書館で借りてきてもらった本を読破するか。 どうするかはホズミに決めてもらおう! 前 | 次 戻 |