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 あれよあれよと私の為らしいパーティーに出席する事になりました。
 ね、言った通りでしょう。私が自分から動かなくたってフラグが勝手に乱立していくんだよ。

 演劇を見に行った時といい、ラヴィ様は特に率が高い。今晩、何もないわけがないよね、出席したくねぇー!
 
 
 午後になり私は日課であるホズミとの庭の散歩をしていた。私の根城のある棟の周りなら良いというディーノのお許しはちゃんともらっている。

 今日はついでにかくれんぼもしました、隠れてたんです。ジッと息を潜めて。
 鬼はホズミじゃありません。ホズミは私の隣に待機です。私を探すのはラヴィ様付きの侍女の方々。早い話が逃げたんです。

 どうせ見つかってたっぷり怒られる羽目になるのは目に見えてたけど、でもせずにはいられなかった。皆の手を煩わせる。これがせめてもの私の抵抗だ!
 
 結果は、侍女さん達だけだと苦戦していたので見兼ねて途中参戦したマリコさんにあっさり見つかりました。

「ハル様お気持ちはお察しいたしますが、どうかここはラヴィ様の顔を立てて下さい」
 と心情に訴えられて観念するしかなかった。マリコさんはとても大人だった。
 
 侍女さん達の手際はとても良かった。他人にお風呂に入るのを手伝ってもらうのは恥ずかしいけど、あれだけてきぱき事務的に洗われるとこんなもんかなって思えてくる。

 流れ作業のようにお風呂を出て身体を拭かれてドレスを着せられて。こんだけしてもらったのはちっちゃな頃親にやってもらって以来だ。

 呆然としている間に私の用意はほぼ出来上がっていた。
 白地に萌葱色の花の刺繍がふんだんにあしらわれたドレスだった。上はチューブトップでタイトだけどスカートはふんだんにドレープがきいていてボリューム感がある。両サイドが少し上に吊り上げるようになっているのがまた憎い演出だ。

 そこそこ高いヒールのパンプスは紐がついてて編み上げるようになってるから脱げる心配はなさそう。
 髪も結い上げてもらって更に宝石っぽいキラキラした飾りをつけられたもんだから怖くて頭を動かせない。落としたらって思うと歩き方もぎこちなくなる。
 
 仕事を遣り遂げたとほんのり達成感を滲ませる侍女さん達にお礼を言う。
 そんなこんなで全身コーデされたわけですが。よくもまぁ私なんかの為にここまで用意させたなっていう。申し訳なくなってくる。

 しかし既にあるのだから着なくちゃ勿体ない。私は貧乏性なんだ。ここまでしてもらったんだ、仕方ないから今晩は大人しく立派なユリスの花嫁とやらを演じてやろうじゃないの。

「ハル様、準備はオッケーですぅ?」

 私の用意の全てをラヴィ様が派遣した侍女さん達に託してルイーノは他の仕事をしていた。ひょこりと応接室の方から顔を出して私の様子を窺う。

「わぁハル様綺麗! 木偶にも衣装ですねぇ!」
「馬子でしょ!?」
「え、でもハル様って木偶ですよぉ?」
「みなまで言うなー!」

 木偶。役に立たない人。事実が突き刺さるんですー! 何も仕事しねぇくせにこんな時だけ一人前に飾り立てて貰うなんざ、何様のつもりだコイツって言いたいんですか。そうですよね、私が誰より一番思ってるよ! だが敢えて言わせて頂こう、私はユリスの花嫁様だ!
 
 なんか最近ルイーノの態度に悪意しか感じ取れなくなってきたんだけど、これは彼女なりの愛情表現なのだそうだ。マリコさんが言うんだから間違いない。心を許した人程ずけずけと物を言うらしい。

 そう思うとフランツさんにも私やマリコさんほどじゃないけど対応が雑だよね。結構気に入られているらしい。

 ラヴィ様達はやっぱ王族って事で一線引いてるので対応はとても丁寧だ。そして問題はディーノ。私から見た感じ、二人ってとっても余所余所(よそよそ)しいんだよね。

 実は昔からよく顔を合わせてた従妹同士らしいんだけど。ディーノがマリコさんを呼び捨てなのはそのせいなんだって! 謎が解けた。でもルイーノの事はさん付なのは彼女が呼び捨てにするのを許さなかったかららしい。

 ディーノ一体何やらかしたの……。
 とまぁ、そんな感じでルイーノの好意の判断基準は毒を吐くかどうか。分りにくいな! 天邪鬼ですか?

「ほら木偶様、お迎えが来てますよぉ」
「木偶呼ばわりやめてよぉ!」
 ペコリと頭を下げた侍女さん達に「ありがとうございました」と笑顔で感謝の意を伝えながら内心冷や汗。

 ディーノか、ディーノなんだな。実はこの前拗ねさせてからまだ一度も会ってないんだ。
 まだネチネチ怒ってたりするのかな、そうだったら意外と器が小さいと言わざるを得ない。がっかりだよ! と。

 期待と不安をいっしょくたに胸に抱え私は彼が待つ隣の部屋へと移動した。

「わぁー、ハルちゃん綺麗だよ! お嬢様みたいだね」

 わぁー、ウィルちゃんでした!
 て、またこのパターンかい。この人は出落ちとしてしか需要がないんじゃないのか。

 そのくらい出てきた瞬間が一番輝いてる人だよね。口を開く前が最も格好よく見える。喋れば喋るほど残念なキャラだ。
 
 そんな人でも肩書は立派な騎士様。ウィルちゃんにエスコートされながら、いざ尋常にパーティー会場へ!
 



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