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 経験値稼ぎも体力ゲージが底を尽きればそれまで。
 げんなりした私を見てフランツさんがおじさん方から引き離してくれた。
 今日はもう遅いからと宿泊施設に案内され、泊まる事を余儀なくされたけれど。

 用意された部屋はとても簡素なものだった。風呂トイレ共同だからテーブルとベッドが置いてあるだけ。なんだか落ち着くわ。

 お城で宛がわれている部屋よりこっちの方が私の部屋って感じがする。
 案内が終わってさっさと出ていこうとしたフランツさんの腕を引っ張って部屋に押しとどめた。

「フランツさんよくも騙してくれましたね!?」
「人聞きの悪い事を言わないで下さい……。確かにハル様には申し訳ないとは思いましたが、私も組織に属する人間、命令には逆らえないのです。二三日中にお城へお返しいたしますので」
「え、明日帰れるんじゃないの!?」

 聞いてないよ! さては言ったら私が来ないと思って黙ってたな? とんだ食わせ者だわフランツさん。
 
「ハル!」

 疲れ果ててテーブルに突っ伏していると、可愛らしい子供の声がして顔を上げた。
 黒のウェーブの髪を揺らしながら小さな男の子が転がるようにして部屋に入ってきた。

「ホズミ!」

 駆け寄ってきたホズミをぎゅうと抱きしめる。おお私の癒しよ!

「どこ行ってたの?」
「ボク、あそこ入れない」
「神殿?」

 こくりと頷いた。私達の会話の流れを察したフランツさんが説明してくれたところによると。
 獣族というのは魔に偏った生き物で、魔力の強い者にとって聖の気の満ちている神殿は苦痛を伴う場所であるらしい。

 人間でも魔力に特化したソレスタさんのような人も神殿は苦手らしい。

「まあホズミは入らなくて正解かもね。私と一緒にいたら大騒ぎになりそう」

 獣族ではそこまで珍しくないらしい黒髪でも、きっと私と並んだら人が何を思うか想像しやすい。しかもこの耳と尻尾。よくないよねやっぱり。

「そうですね、ハル様と離れるのは不本意でしょうが今日のように別行動を取った方が良いでしょう」

 私の服を掴む力を強くしたホズミに萌え殺されるかと思った。そうかそうか私と離れるのがそんなに淋しいか初(う)いやつめ。仕方ない、今夜は思う存分可愛がってやろうじゃないかふふふ。

 まずは狼の姿に戻してお風呂入れ綺麗に洗ってあげて、ブラッシングして気が済むまで撫でまわして抱きしめて寝るんだ。
 今晩は良い夢みれそうだ。

「ではおやすみなさい」

 丁寧に挨拶をして出て行ったフランツさんに、私とホズミは揃って手を振って見送った。

「ハル、見せたいものある」
「なぁに?」
「ここじゃないの。明日に」

 今日そこいら中散策してて何か見つけたのかな? にっこりと笑って頷くとホズミは金の瞳を細めて照れたように笑んだ。かーわーいーいー!

 もう我慢出来なくなったので誰もいない隙を見計らって共同浴場に行ってホズミを隅々まで洗って、もともと良かった毛並をつやっつやにしてやった。

 部屋に戻ってベッドの上で満足いくまで撫でて頬ずりして高い高いして構い倒した。
 
 あったまったしアニマルセラピーも受けて元気になった私とは対照的にホズミがくたくたになってたような気がしたけど、まぁ私の思い過ごしに違いない。
 



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