▼page.4 ちょっと!? なんか話が違いません!? 私出店巡りだけが楽しみで遠路遥々と王都からキリングヴェイまで来たんですが。どういう事なの。誰か説明してちょうだい! 私の焼トウモロコシとたこ焼きとカステーラ! 射的に金魚すくいに型抜き! みんなみんなこの世界の祭りにはないだろうけど。 だからこそどんなものか隅々まで見て回りたかったんだけどなぁ。 ああ、因みに今ホズミとディーノとソレスタさんは仲良く男三人で回るらしいよ。 「アタシ達ったらまるで親子みたいね!」 とかはしゃぐソレスタさんの尻をぶっ叩いたのは当然だろう。ディーノなんて剣抜いてたからね。その手の冗談大嫌いらしい。 しかしあの似非オネエキャラめ、美味しいトコ取りなんて許さないんだから。 ホズミを真ん中にして三人手を繋いで歩いたりさせない! 本来なら私の在るべき位置にソレスタさんが何の違和感もなく据え置かれたら泣いてやる。 なけなしの女のプライドが許さない。 「おや、そろそろミラちゃんの奉納が始まるんじゃないかい?」 どっこいしょっと、とおばちゃんが立ち上がる。 みんなぞろぞろと部屋から出ていくのに私もついて行った。 舞台とこの建物は繋がっているから、移動は楽ちんだ。 「ミケくんも行くよ」 子供達にもみくちゃにされ、もうどうにでもしてくれ状態だったミケくんをひょいと抱き上げる。 えー連れてっちゃ駄目ー、もっと遊びたいーと駄々を捏ねる子供達に「この子私のだもん!!」となんとも大人げない捨て台詞を吐いて部屋から出てきた。 ぎゃはは! と彼等の笑い声を背に受けながら。なぜ爆笑されたし。幼児達の笑いのツボわからん。 私が町人の方々に交じって観賞する事は出来ないので、舞台裏からこっそり覗き見る羽目になりました。 何もやましい事などないはずなのに、どうしてコソコソしないといけないのか。 答えは、衣装が派手で目立ち過ぎるから、ともすれば舞台上のミラちゃん並みに皆の意識をかっさらってしまいかねないのだ。 目立つって悪目立ちの方ね。 私の腕の中にいるミケくんは大人しく、舞台の上にいるミラちゃんを見つめている。 瞬きも忘れたようにじっと。 ミケくんは猫の姿で魔力も封じられているから何も仕掛けられない。 どうやってかは分らないけど騒ぎを起こして祭りを止めさせようとしていたらしいミケくんを捕まえているのだから、何も起らないはず。 使用している鏡もダミーだ。本物はブラッドが持っている。 力を込めた所で変哲もない鏡では、どうにもならない。 でもやっぱり妙な胸騒ぎがして私もミラちゃんの一挙一動を注意深く見守っていた。 ミラちゃんが祝詞(のりと)だろうか、長文をすらすらとよどみなく唱え終ると、天高く鏡を持ち上げた。 もうそろそろ終わりだ。 この後魔法装置で舞台の周辺が緑に染まる、ように見える視覚の錯覚を起こさせるんだとか。 本当に緑に染めちゃったら、また戻すのに大量の魔力が必要になるからだって。省エネだね。 どんな風に映るのかドキドキしながら待っていた。 が、一向にその装置が発動しない。 裏方の人達が慌てて装置の方へと駆けていく。観客も察したのかざわつき始めてきた。 何? ただの装置の故障? でも昨日もあんなに念入りに点検してたのに。 そして、動揺が走る周囲に反して、一人ぽつりと舞台に立つミラちゃんは取り乱す事もなく平静に前を見据えていた。その落ち着きが、逆に私の不安を煽った。 「あ、ミケくん!」 急に暴れ出したミケくんが、私の腕からするりと抜けて舞台に一直線に走り出した。 前 | 次 戻 |