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一方その頃、鷹島に捕まった葵はというと。


「先生ー…も、帰りたいっす…」

「ダメだ、職員室が残ってるだろ」

やっと体育館掃除が終わったところだった。
さすがに広い体育館。モップ掛けだけで30分以上かかってしまった。それはもちろん2人がかりで。

鷹島のストレス発散は掃除らしく、無言でひたすら体育館を磨きまくっていた。
だからといって葵を巻き込むのは可笑しいのだが。

そしてやっと今、もうひとつの掃除場所である体育教師用職員室の清掃を始めたところである。
さすがに、物凄く疲労する体育館掃除を終えた後の更なる掃除はキツい。

普通の職員室よりは狭いのだが、狭いぶんだけものがごちゃごちゃしている。
それらを掻き分け掃き掃除、拭き掃除、窓拭き。
いつもの罰掃除より疲労が大きすぎる。
しかもちょうど他の体育教諭は皆帰ってしまったらしく、誰も鷹島を止めてくれないときたものだ。


もう家には竜一と高平兄弟が居るというのに。
とにかく早く帰りたくて仕方ない葵。
おかげで、鷹島の機嫌が最悪ということを忘れてしまった。


だらだらとほうきを動かしながら、

「先生ー、今日はもう終わりにしましょー」

と話しかける。
が、鷹島は「掃除が終わったらな」というばかり。
確かに、葵が金髪宣言をし、服装もまたもや直す気も無くチャラけて、意味不明な行動(抱きついた)をとったのは悪い。しかも100%。
しかし、機嫌が悪いのを生徒にぶつけるのはどういうことだ、と葵は口を尖らせる。

段々自棄になってきた。
終わらない疲労ばかり溜まる掃除と相俟って。


思わず、


「鷹島ちゃん、ほんとお仕置きなら身体にしてくれよー、俺疲れた」

と、高平兄弟のジョークを口走ってしまった。
いつも、竜一に「りゅーいっちゃん大好き」など冗談で言っている癖も相俟ってか。
また、鷹島の「何言ってんだ気持ち悪ぃな!」と言った怒号か、溜息を待ち構える。

しかし、何の返事もない。
窓の外から聞こえる、サッカー部の練習声援だけが薄っすら響いただけ。

もしかして、本気で怒っているのだろうか。
葵は恐る恐る鷹島に近づいていった。

ギシギシ、と古い床が鳴る。
一歩一歩近づくたびに。

あと数歩で鷹島の隣に、というところで鷹島は思い切り立ち上がった。
斜め前に立ちはだかる鷹島に、若干怯えの色を見せる葵。それが、間違いだった。
いや、間違いは最初から、だったのかもしれない。


「え、痛っ…!?」

がっ、と勢い良く肩を掴まれ、硬い床に押し倒された。と、気づいたのは痛みがようやくひいた頃。
何で押し倒されたのか、状況も分からぬまま葵は目をぱちくりさせ、見下ろす鷹島を怯えるように見つめた。

もしかしてシュートボクセのようにボコられるのではないか。
そんな恐れが全身に走る。
が、鷹島に葵を殴る気は微塵も無かった。

いつもチャラチャラとしているか、へらへらしているか、謝るかしている葵が、怯えているのを見て、鷹島の隠れたサディスティックな心が反応する。

無言で葵のベルトを外し、その細い手首を一括りにして、近くにあった棚の柱と繋げた。


「せ、先生?何…!?」


何のための拘束か分からない葵は、勇気を振り絞って無表情で葵の衣服を剥ぎ取る鷹島に問う。
すると、ぴたりと鷹島の動きが止んだ。

と、思えばその表情はまるで獲物を捕らえた肉食獣のように、にたりと笑みを浮かべる。
ぞっと葵の背筋に悪寒が走った。

ゆっくりと身体を押し倒し、鷹島は葵の首筋に噛み付く。ピリ、と走る痛みに葵の身体はびくりと跳ねた。


「なに…!?なに!?」

あまりの恐怖に、葵は必死に聞く。
お願いだから、いつもの先生に戻ってくれと何度も何度も心の中で懇願しながら。
しかし、もう鷹島は戻らない。理性をかなぐり捨てた獣は、ただの獣だ。

首筋から顔を離し、葵の顔を直に見下ろし、




「オメーが頼ンだろうが…身体にお仕置きしてほしいって」



サディスト全開な、意地悪な笑みを浮かべた。
それは、誰も見たことがない、彼の押し殺していた部分。
そんなもの、見たくなかった。


それなのに動けないこの身体は、恐怖が原因なのか、それとも別の何かか。葵には、考える暇も、無かった。

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