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葵が体育館に連れ去られている間、竜一と高平兄弟は齋藤家へとたどり着いた。
徒歩ならば30分かかるところだが、ちょうど齋藤家近くへと止まるバスが出ていたのでそれに乗って時間短縮。

悲しいことにこのバスは昼間か夕方しか出ていないのだ。よって葵は毎日徒歩通学。
かわいそうだなぁなんてバカにしながら、高平兄弟は齋藤家のチャイムを押した。


すれば、玄関のドアを開けるは齋藤兄。
のんびりしていたのだろう、あくびをしながら


「お?葵のフレンズじゃねーか…葵はどうした?」

とだるそうに聞く。
しかし竜一には分かる。彼がだるそうにしながらも、しっかと自分を見つめているのを。
射抜かれそうだ、と怯えながら竜一は視線を逸らす。


「葵は生徒指導の先生に捕まったから先に遊びに来ましたー!」

「拓也兄ちゃん入れてくださーい!」

ちょうどタイミングよく高平兄弟がきゃっきゃと声をあげて拓也に抱きつく。
その光景は、小さな弟を相手にしている兄そのもの。というよりはちょっと親子に見える。

無邪気な2人に、じゃっかん驚きつつも拓也は、


「おー!事情はわかった、葵の部屋行ってゲームでもして待ってるといいぜ!」

「さすが話がわっかるー!」

あっさりと受け入れ、高平兄弟を家に入れた。
ばたばたと高平兄弟が、遠慮無しに葵の部屋にあがりこむ。
そして、音がドアの奥へと消えた瞬間、拓也の優しい無邪気な笑顔が消えた。その代わり現れるは、獲物を見つけたような、獣の笑顔だった。

玄関の外で隠れている竜一にゆっくりと近づき、


「いらっしゃーい、竜一くん」

「うわわ!!ちょ、だめ、俺今日は夏休みの計画をしにっ!」

ばたばたと暴れる竜一を軽々と抱っこし、葵の部屋ではなく、自分の部屋へと拉致。


「じゃあ、まずは俺との夏休みの計画をたてますかー」

なんて言いながら、抱えたまま自分のベッドに座る。
久々に入った拓也の部屋と、包まれる体温と香りに青木の鼓動は加速していった。


「竜一、」


慈しむような声で呼ばれ、竜一は拓也の胸に埋めていた顔を上げ、その瞳を見つめる。
拓也はその潤んだ瞳の上の瞼にキスをした。
すると、もじもじと身体を揺らす竜一。
ああ、やっぱり可愛いだなんて拓也は思いながら久々の竜一の肌に触れた。

シャツを捲くり、胸板にいやらしく手を這わす。
ぴくり、と細い身体が敏感に跳ねた。


「あ、…だ、ダメです、彰人と渚が…!あと、あお、葵が帰ってくる…」


ふるふると頭を横に振りながらも、縋るような瞳はじっと拓也を見つめる。
その可愛い抵抗に、拓也は思わず竜一の唇に口付けた。キスをするのも久々だ。

柔らかい唇を下で割り、口内を優しく貪る。

「ん、…ふ…、」

心地よいのか声を漏らす青木。
拓也はその反応と味を楽しみながら、心の中で、


(今日こそは…最後まで行くぞ、俺…!)

と決意した。
その通り、彼らは付き合ってから数ヶ月経つが、キスとペッティングまでは行ったものの最後まで繋がったことが無い。
拓也も男盛りの性欲有り余った男。
可愛い恋人とセックスをしたいのは当たり前である。
が、しかし。


ばたばたばた!と、2つのやかましい音が家中に響き渡った。
急いでお互いに身体を離した直後、遠慮の無い力がドアを思い切り開ける。


「拓也兄ちゃんも一緒に遊ぼー!」

「あれ!?竜一もここに居たのかよー?ちょうどいいや、みんなでマリ●パーティーしようぜ!」


きゃっきゃと無邪気な邪魔が入ってしまった。
拓也は顔を引きつらせながらも、必死に笑顔を作って、

「おう、久々にやるか!じゃ、俺ピー●姫な」

高平兄弟の視線をなるべく火照った竜一に向けないよう、軽々と2人を担いで葵の部屋へとダッシュした。
高平兄弟はご満悦。だが、心の中では悲しみに泣いているというよりは嘆いた。


(超可愛かった…!竜一…!!)

もじもじと身体を揺らし顔を赤らめる姿はもう、拓也の心と下半身に直撃まっしぐら。
なのだが、今回のように彼らには障害と邪魔がありすぎるのだ。

まずは、拓也の弟であり竜一の親友の葵。
彼にはまだこの関係をバラしていないので、見つかるわけにはいかない。(色々と)
しかし、竜一を連れてくるのは毎回葵なのだ。
葵と遊ばず拓也と過ごすのも可笑しいので兄は生殺し状態。

次に先ほどの騒動で分かるとおり高平兄弟。
彼らは非常に拓也を気に入っており、竜一と拓也の会話さえ遮ってしまう。

最後に、距離と時間の問題。
拓也の仕事は図書館司書。
年がら年中忙しい、という訳では無いが図書館の閉館時間まで働いているため、竜一とこっそり会うことも出来ない。

そのうえ、実は竜一は学区内ギリギリから学校にバスで通っている。車で約30分の道のりを。

なので、会えるのは竜一が拓也の図書館に来ているときくらい。
実際、出会いもそこなのだが。


拓也はそんな自分たちの障害を悲しく思い出しながらも、高平兄弟と何とか平静を戻した竜一と共に仲良くマ●オパーティを始めたのだった。

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