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ゆるやかな時が談笑とともに流れる。
時たま、西條か航が「ゆーちゃん」呼びで祐樹をからかったり、ひよりの列伝を聞いてある意味感心したりと、各々の会話で盛り上がった。

食事をしながら、積もる話もすれば、時が流れるのはそれこそ速く。
気づけば9時を過ぎ、店長と宮崎がお土産と共に輪に入ってきた。

航と一番仲のよかった宮崎は、本当に嬉しそうに彼と話を始める。次いで店長も、同じように。
そんな3人を和やかに祐樹が見ていると、袖を引かれた。
隣にいるのは、ひより。
一体どうしたのだろうかと、祐樹が疑問の視線を投げると、「ちょっといいですか」と小声で囁いた。

おかしな期待をしてしまう自分を押さえ込み、祐樹は小さく頷いて、ひよりと一緒に一度小部屋を出た。


ひよりの後ろを着いていくと、そこは店の裏側の駐車場。
夜のためか、真っ暗で少しホラーの雰囲気満載で、祐樹は少し怯えながら、無言で縁石に座るひよりの隣に腰を下ろした。

まだ、冬の寒さが薄っすら残る空気。
それと同様に、先ほどから一言も発さないひよりの冷たさに、祐樹は内心パニックを起こしかけた。
一体自分が何か気に食わないことでもしたのか、もしかして西條の隣じゃないからイラついたのか、それとも俺のことが生理的に無理で一発締め上げようとしているのか…と葛藤を繰り返す。

とにかく何か話題を出そう。
祐樹が乾いた喉に唾を落としながら、声を発そうとした、そのとき。

さすが、チーマーをしていただけあるか。

祐樹の軽い体は軽々とひよりに持ち上げられ、それまた軽々と駐車場の近くにあった茂みへと、投げられた。

「うっわ、!?」

茂みは意外に深く、地面も柔らかかったので痛みはそれほどない。しかし、少し高いところから投げられたので衝撃が祐樹の体を襲った。
くらくらする頭を必死にクリアにさせ、何事かと閉じていた瞼を開けると同時に、腹に重み。

目の前には、

「と、東條…さん…?」

可愛らしい顔をしていながら、喧嘩慣れしていない祐樹でも分かる闘争のオーラ。
それをむき出しにしたひよりが、事もあろうか祐樹の腹の上に跨り、じっと祐樹の顔を見つめていた。

男性的にはかなり嬉しい状況かもしれない。
と、祐樹は少しだけ嬉しいかもと思うが、それよりも剥き出しの闘志に、怯えて体を震わせていた。

何に謝ればいい、どうすればいい。
そればかりを考えている間にも、ひよりは


「…岡崎先輩ってやっぱり、」

祐樹の胸倉を掴み、自分の顔に近づけた。
祐樹の恐怖がマックスレベルに達した、直後。
ひよりの口からは、全く違った言葉が出てきた。







「可愛い顔してますよね、なんというか女顔?ってわけでもなく…あ、結構目が大きい。ていうか顔小さっ!あーでもほっぺむちむちで柔らかい」


そう言いながら、むにむにと祐樹の頬を押して遊ぶ。
つつかれるほうの祐樹はといえば、放心状態。
殴られると頑なに怯えていた反動であった。

そんなことも気にしないひよりは、益々行動をエスカレートさせ、そのまま祐樹を押し倒し、彼の着ていたシャツを剥ぎ取り始めた。
気温の低い外気に晒された肌は、今まで冬のため隠してあり気づかなかったが、意外にも色素が薄い。
そのうえ、ひよりが今まで見てきたような男たちとは違い、線が細い。

「うわ、細いな…あ、でも肋骨は出てないんだ。てか筋肉無いなー…私より無いんじゃないかな、これ」

そう言いながら、手を這わせる。
陶器のように、とまではいかないが、触り心地の良い肌質に思わず触りまくるひより。
さすがに、祐樹も放心状態でいられるわけがなく。

「ちょっ、!東條さん、やめっ!なにしてんの!?」

やっと四肢をばたつかせ抵抗し始めた。
しかし、喧嘩などろくにしたこともない祐樹が、喧嘩慣れしたひよりに勝てるわけも無く。

「おっとっと、大丈夫ですよ。男じゃないので犯しませんし、マワしませんよ」

あ、あと岡崎先輩は殴りません。と付け加えて恐ろしい言葉を口に出した。
それでも、何をされるか分からない。
祐樹は何とかひよりから体を離し、這い蹲るように逃げた。が、時既に遅し。
逃げれるわけも無く、祐樹の背中に思い切りひよりは足を押し付け動きを封じ込める。
そのうえ、自分のベルト(お洒落用でスカートの上に巻いただけ)を引き抜き、祐樹の両手首を縛った。

もう逃げることは、出来ない。
祐樹はあまりの恐ろしさにか細い悲鳴をあげた。



「…岡崎先輩ほんとに付いてるんですか。というか、あなたのいじったら面白い性格以外どこに西條さんを引き寄せるフェロモンがあるんですか!」

「なに、もうなんだよそれえぇ!!」

助けてくれ!と祐樹が暴れる間もなく、ひよりはてきぱきと祐樹のベルトを引き抜き、ズボンと下着をずり下ろそうとした直後、



「はいストップ。ゆーちゃんいじめちゃ駄目だよ」


柔らかな声が、彼女を諭した。
にこにこと微笑む航。だが、ひよりは止まらなかった。


「北條先輩ぃ…私、私分かってるんですけど、わかんないんです!だから、だからあああ!!」


益々パニックになったひよりは、
思いっきり、祐樹のズボンと下着を、哀れにも取り去った。


「っ、ぎゃああああ!」


こんな外で。しかも女子の目の前で(とったのはその本人だが)
下半身を露出する羞恥。
祐樹はせめてもの防衛で、身を丸くして前を隠し、尚且つ必死にシャツを後ろ手で下ろしてなんとかギリギリ恥部だけは隠しきった。


「岡崎先輩足細いってかアンタ足にも筋肉無いんですかあ!そんな足だったら西條さん足フェチだったら一発ですよ、もしかしてやっぱり付いてないんですか、付いてないなら諦めますから!」

「意味わかんねぇ!やだ、絶対やだあぁ!」


航が必死にひよりを宥めようとするが、暴走したひよりに腕力で敵うわけが無い。
祐樹がまた身を投げられそうになった、そのとき。

ひょい、と暴走機関車化していたひよりが宙に浮いた。


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