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夕方6時はちょうど、空腹のタイミングである。
年齢的なこともあり、軽い送別会が浅見に唯一ある座敷のある飲食店で行われた。

と、言ってもメンバーは主役である航、そして祐樹とひよりのバイト組、そして西條。
9時頃に店長と宮崎も到着するらしいので、結構な人数だ。

長方形の広いテーブルを囲み座る。
西條と航が隣で、その前に祐樹とひよりが腰を下ろした。
最初は、祐樹が航の隣に座ろうとしたのだが、航の希望で席順を変更した。確かに、積もる話もあるのだろう。祐樹は何となくもやもやする心を隠しながら、笑顔で航にその席を譲った。






「何か、僕のために…ありがとうございます」

航は、嬉しそうに笑いながらも恥ずかしそうに顔を少し隠しながら3人に向かって礼をする。

「北條は2年半働いたからな、当然だ」

航がアルバイトを始めた頃から居た西條は、最初に配られた水を軽く飲みながら頷く。
ひよりは「すごいですね!」と勉強との両立に目をきらきらさせて航を見つめた。
実は、結構仲が良かったりするのだ、航とひよりは。

「東條さんもがんばってね」

「はい!…と、言いたいトコですが…私勉強はめっきりダメダメで…」

「ゆーちゃんに教わればいいじゃん」

「…ゆーちゃん?」

瞬間、ひよりの隣に座っていた祐樹が思い切り飲みかけていた水を噴出した。
テーブルに思い切り水しぶきがかかり、慌てて傍にあった布巾で拭きながら、祐樹は真っ赤な顔で航を睨む。

「ちょっ…そのあだ名はもう言わないって言ったじゃんか!」

「えー?いいじゃん、ゆーちゃんも久々に僕のことわたにぃって呼んでいいよ」


2人は、幼馴染である。
今まで公共の場だということで「先輩」と「岡崎君」呼びを定着させていたのだが。
どうやら航は、バイト引退と卒業を兼ねて元の関係に戻ろうとしているらしい。それは祐樹にとっても嬉しいことなのだ、が。

思い切り笑いをこらえて、肩を揺らす大人が1人。
しかも祐樹の目の前。

「…西條さん…何笑ってンすか!」

があっと喚いた途端、西條は堪えきれず爆笑。
それにつられて、ひよりも高らかな声で爆笑した。
あまりの羞恥に、祐樹は逃げるように座席の隅へ身を縮めた。それが逆効果なのに。

西條はまだ腹を抱えながら、

「おいおい、拗ねンなよ ゆーちゃん」

ひよりは申し訳なさそうにしながらも、

「そうですよ、ゆーちゃん先輩」

いじめっ子が2人、祐樹をからかい始めた。
案の定、いじめ心を擽る祐樹の性格はいい具合の反応を返してくる。
祐樹は唸りながら、顔を真っ赤にして、

「ゆーちゃん言うな!特に西條さんが言うときもい!」

と憤慨。
ついでにいつもの西條に対しての「きもい」攻撃も忘れずに。
いつもだったら「きもい」と言われると、西條も怒り軽く叩いたりプロレス技をかけたりするのだが、今回は「ゆーちゃん呼び」があまりにもツボにはまったらしく、ただただ爆笑。


「あーもー!今日は航先輩の送別会で俺の呼び方は関係ねぇよ!」


そんなおかしな盛り上がりで、今日の送別会は始まった。

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