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「北條くん、引越しはいつ?」

にこにこと心底嬉しそうに、宮崎はまるで親戚のおばさんのように航に色々と質問をした。
律儀な航はその一つひとつにきちんと答えを返す。もちろん柔らかい笑顔も添えて。

そんな2人を横目で見ながら、祐樹は黙々と商品補充をしていた。
コンテナから適当なものを取り出し、探し置いてゆく単純作業。大抵はドライバーかネジなので、手元だけ動いてゆく。
なので物思いにふけることも可能である。

祐樹は、ぼんやりと航と雄太のことを考えていた。


自分は6歳頃からこちらに住み始めたので、彼ら2人の付き合いよりは短い。
いくら3人で遊ぶ日が多くとも、2人より家が遠いので彼ら2人で遊ぶよりは少なかった。
そこで、なぜ雄太が航に恋愛感情を抱くのかは、未だに分からないが一緒に居るという感覚は強いのだろう。

(やっぱ、好きな人と離れるって辛いのか)

自分にとって航は兄のような存在なので、多少離れても「元気かな?」程度。
でも、好きな人だったら?

祐樹の頭上で、もやもやとその「好きな人」と離ればなれになる妄想をはじめようとした、そのとき。


「おい、何ぼさっとしてンだ」

「うわ!」

背後からいきなりかかる声に、祐樹は思わず短い悲鳴をあげ飛び跳ねる。
急な出来事に、心拍数が上昇するのを何とか落ち着かせ振り向けば、そこには案の定。

「…俺は化け物か何かか」

不機嫌そうな西條が、追加のコンテナを持って立っていた。
だが、コンテナの中身はまだまだ大量。
西條は仕方ないとため息を吐いて、そのコンテナをとりあえず西條の分のコンテナに積んだ。
申し訳なく祐樹が謝ると、西條は気にしていないのか別の話題を振る。


「口あんぐり開けてたぞ」

「うそっ」

「何をそんなに考えてンだよ…」

祐樹があまりにもぼんやりとしていたことが気になっていたのだ。
最近はようやく、あの万引き未遂をしたパートの芳川と打ち解けてきたばかり。それだけで彼の過去を無くすことなど毛頭無理な話だが、負担は軽くしたであろう。
それがまた更に負担を募らせているのならば、と思った故である。

だが、

実際は自分の幼馴染と幼馴染兼先輩の恋愛事情を考えていただけ。
そんなことを言える訳もなく、祐樹は何とか別の話題で翻す。


「北條先輩が、もうすぐ卒業するなーと思って…」

「そういやそうか…」

バイトも増やさねぇとなあ、と西條は頷いた。
だが、その言葉に少しだけ祐樹は眉をしかめる。
またひよりのような可愛い子が入るならば大歓迎だが、変に不良な人やチャラチャラしたギャル男は苦手である。

ボコられたらどうしよう…!と祐樹が変なことを想像していると、

「お前、明日空いてるか?」

いきなり、聞いたことのあるようなセリフ。
以前とは若干違うが、そのニュアンスに思わず祐樹は固まる。それはまるで何かのお誘い。
明日はバイトが休みであるが、学校はある。一体何に誘うのだろうと期待をしながら祐樹は頷いた。

「何か食いに行くか」


まさかの、である。
そんな、どうして自分を?と祐樹はぐるぐると考え始めた。が、


「北條とお前と東條と俺で」


「あ…ハイ、いいっスね…!」


それは西條の優しさが現れていたが、不思議なことに祐樹の心に引っかかりまくった企画だった。
ちょうど明日はその4人が休みであるからという理由だろう。

それでも、久々に航と話せるだろうと祐樹は親友のために意気込むことを決意した。

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