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時は過ぎて、日曜日。
ようやく本調子を取り戻した西條は、昼休憩を取る。
いつも昼飯はコンビニ弁当か、その辺の食堂で済ましているので、今日はどちらにしようかとぼんやり考えながら裏口へ向かおうとした。

そのとき、

「おわわ、西條さん待って!」

間抜けな声を上げて、祐樹がわたわたと走ってきた。
昼休憩一緒じゃなかったよな?と西條が疑問に思いながら一応待っていると、いきなり腕を掴まれる。
祐樹から触れられた事がほとんど無かったので、西條は思わず目を丸くした。

そのまま事務室へと引っ張られる。

「ンだよ岡崎」

「い、いいからいいから!」

ぐいぐいと引っ張られるがままに、いつも昼食を取っている席へと座らされる。
昼食を取るなとでも言うのか、と疑うが、当の本人は慌しく自分の鞄をがさがさと漁っていた。
西條が不思議に見つめていると、やっと取り出せたのか祐樹は一息吐いて立ち上がる。

そして、

「これっ、西條さんいっつもコンビニ弁当か外食だから…」

困ったような、怒ったような顔をさせ、頬を真っ赤にし、青いバンダナに包まれた弁当を西條に押し付けるように渡した。

予想外のことに、西條がぽかんと口を開けているとふとある事に気づく。
西條が座り、祐樹が立っているので目線が変わったおかげで。


「…この弁当、お前が作ったのか」

「ち、違っ!ばあちゃん、ばあちゃんが作ったンスよ!」

祐樹は必死に否定するが、西條はケラケラと笑って、祐樹の手を掴んだ。


「お前不器用だもんな、包丁難しかったろ?」

そんなに絆創膏貼り付けて、と絆創膏が沢山付いた指をわざとらしくなぞりながら、笑う。
祐樹の顔が一気に紅潮し、言い返せないので口だけがぱくぱくと動いた。
西條の言うとおりである。

普段料理をしない上に、祐樹は不器用。
それが相まって、朝早く起きて作ったにも関わらず2時間もかかってしまったのだ。


しかし、まさか自分が西條に弁当を作りたいだなんて、祐樹自身でも理由が分からなかった。
まるで料理で気を引こうとしている女子のようで、自分が気持ち悪くて仕方が無い。

それは西條も思っていることではないか。
祐樹は本人を目の前にして青ざめそうになる。
慌てて、嫌なら俺が食うからと弁当に手を伸ばそうとした。が、それは簡単にかわされ、


「何言ってんだ、食うに決まってンだろこんな珍しいもん」


器用にバンダナの結び目を解かれた。
ぽかんとする祐樹を見ながら、西條は静かに「仕事」と命令する。こんなときでも社会人らしさは忘れない。
祐樹は慌てて、ほったらかしだったレジへと全速力で向かった。


祐樹が出て行き、事務室に1人。
西條は久しぶりに人に作ってもらった弁当を開けた。
祖母に教えてもらったのだろう、少し中身は昔風だがそれが暖かい。

少し焦げた卵焼きを口に含みながら、西條はため息を漏らした。
嫌だとか、鬱陶しいなどの理由ではないため息。



(…可愛いことしてンじゃねえよボケ岡崎)



嬉しさともどかしさのため息だった。



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