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は、と息を思い切り吐き出す。
同時に瞼を開けば、そこは先ほどと変わらない西條の車の中。
また乱れてくる呼吸を整えれば、鼻腔から太陽の香りが伝わり、落ち着いてくる。

ああ、やっぱり心地よいと確信した祐樹は、も一度眠るためではなく、落ち着くために瞼を下ろした。

すると、ドアがいきなり開く。
大きな音にびくりと体を跳ねさせれば、開けた当人が「起こしたか」と聞いた。
その声に、ふるふると首を横に振れば、


「そうか、とりあえずお前ン家まで送ってくから着くまで横になってろ」

そう告げて、エンジンを着けた。
シートベルトをつけ、アクセルを踏み、ハンドルを切るその姿を、祐樹はぼんやりと見る。
まるで、夢を見るかのように。
もしくはまだ夢の続きにいるかのよう。

シートに顔を埋め、もう一度大きく息を吐いた。
落ち着く心音。
なんでこんなにも、ここは落ち着くのだろうと祐樹は頭の端で薄っすら疑問に思った。





「岡崎」

ぼんやりとしていると、いつの間にか車は祐樹の自宅の前に止まっていた。
西條に着いたぞと言われ、祐樹は掠れる声で礼を言いながらドアを開けた。
冷たい空気が、肩を冷やす。
冷やしたのは、肩だけでは無かった。

彼の視界に、自宅が映った瞬間。
ぞわりと鳥肌が全身に走る。
今まで忘れようと心に封じ込めたものが溢れ出したかのように。

(だいじょうぶ、大丈夫)

祐樹は心の中で何度も言いながら、前へと足を進めた。
進めるたびに思い出す。
こんな思いをさせてごめんね、と謝る祖父母の顔。
近所の人の同情めいた視線。
うれしいこともあったはずなのに、今は苦しいことしか思い出せない。

また、呼吸を忘れそうになった。



そのとき、
祐樹の体は何かの力によって思い切り引き寄せられ、疑問に思う間もなく、また先ほどの空間へと、戻された。


何の音も聞こえなくなった後、ようやく祐樹は西條がまた自分を車に放り込んだのだと、気づく。
なぜ、とぐるぐる考えた。
かと言って、飛び出せるほどの元気が無いうえに、なんだかこの車から 出たくなかった。
そうしている間にも、また眠気が襲い、祐樹は二度目の夢へと堕ちていった。



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