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「みなさん、またまたこんにちは!
美人かわいこちゃんを見た後は、
男前で更に心と目を潤してくださいね!
さあさあ、始まります!まずはエントリーナンバー1番!…」

饒舌なマイクパフォーマンスを披露する。
今回の男前コンテストは、
生徒が5名、他の高校の生徒が3名そして西條含む一般の人が3名だった。
おかげで無駄に盛り上がる盛り上がる。
女子達は黄色い声をあげ、男子は爆笑。
普段真面目な高校なので、意味不明に盛り上がるのだ。


一方裏方では、祐樹が別の放送部員に質問されていた。

「推薦者も壇上に上がってもらいますがいいですか?」

喋ったりはしないので、と言われたが祐樹は唖然とする。
なぜなら自分の格好。
ウサギの耳をつけたメイド服。しかも女装。
どうみても、変態である。

勘弁してください、と言おうとしたその時。

「いいですよ」

思い切り営業用のスマイルを見せ付け、勝手に承諾する西條。
普段はお年寄りやおばさん方など年配の方にしか見せないのだが。
それは女子高生にもばっちり効果を発揮するらしく。

「わ、わかりました!」

頬を火照らせて、他の生徒と黄色い声をあげた。
なんという男だと思いながらも、祐樹はぶるぶると拳を震わせる。

「西條さん!」

「ざまみろ」

そう言って意地悪に笑って舌を出す。
本当にこの人は大人なのかと心の中で泣きながら祐樹は必死に耐えた。
目的は西條を振り回すことだったが、
それよりも彼が優勝すれば自分に米が一袋。
祖父と祖母が喜ぶ顔が思い浮かぶ。

(じいちゃんとばあちゃんのため!)

歯を食いしばり、拳を握る。
羞恥に耐えようと決意しながらも、目立たないようにしようとも、思った。







「それでは最後になりました!エントリーナンバー11番!
浅見町よりお越しの西條瑞樹さんです、どうぞ!」

浅見町というのは勤め先があり、尚且つ祐樹の地元。
少しだけ離れているので、高校の皆からは珍しがられた。
それよりも祐樹は、ほぼ初めて聞く西條の名前に目を丸くする。

(みずき、か…)

何だか綺麗な響きだ、と思いながらも
祐樹はこそこそと司会者に隠れるように一礼をした。


「では西條瑞樹さん!何か特技をどうぞ!」

壇上にあがり、その容姿にまず黄色い声をあげられて
引きつっていた西條は、更に顔をひきつらせた。
元々自分の容姿にそれほど自信が無く、そのうえ
大勢の前に立つのはあまり得意ではないのだ。
更に特技を披露しろといわれ。

彼の心はどん底に落ち込む。

そのままステージの端へと歩いて行ってしまった。

急な行動に、司会者も祐樹も目を丸くする。
会場は何をするんだろうかと期待をするが、
祐樹はただただ慌てて手を振ると

声を出さずに口を開いて、あごで命令された。

「どけ」と。

反射的に祐樹は司会者を引っ張りステージの後ろの方へ避難。
した瞬間、西條が数歩助走した。



転回のち前方宙返りにひねりを加えたもの。
と、祐樹が理解出来たのは西條が着地して歓声を浴びたあとだった。


「凄いですね!」

「高校ン時体操部だっただけですよ」

また営業用の笑顔を浮かべ、更に会場を沸かせる。
更に客席の前方からもっととせがまれ、バク転やらバク宙やらを披露した。

あんぐりと口を開けるのは、祐樹だけ。

(弱点無しかよあの人!)


仕事は出来る、容姿も申し分なし、おまけに運動神経も抜群。
目の前でそんな人を目の当たりにし、祐樹はとことん肩を落とした。
自分とは世界が違う、と。

気付けば、西條の優勝した歓声が響く。
大技を披露、なおかつ営業用の優しそうな笑みで皆ころっと騙されたのだった。


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